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VOL.09 絵本とアトリエめし イラストユニット「はらぺこめがね」 原田しんやさん 関かおりさん

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イラストユニット「はらぺこめがね」として、挿絵や絵本制作などの活動をしている原田しんやさんと関かおりさんご夫妻。インスタグラムで発信するアトリエでのお昼ご飯「♯アトリエめし」も評判で、「食べ物と人」をテーマにしたユーモアあふれる絵本は、独自の世界観で大人をも魅了しています。

料理を作ること、食べること、おいしさを共有することの楽しさを伝えていきたい。

「食べ物を描くうえで一番大切にしているのは、食材や料理のリアリティ。普段の食事も、丁寧に作ることを心がけています」

いろいろな街でいろいろな人のライフスタイルと出会う、サーモス日和。最近気になることのひとつは、いろいろな人たちのライフスタイルと食のかかわりだ。「食べること」とみんなは、どう向き合っているのだろう。

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絵本の主人公はフルーツポンチからやきそばまで!「食べ物と人」をテーマにした遊び心満載の絵本作り

「おいしそう だから といって えほんを かじらないで くださいね」という序文ではじまる、絵本デビュー作『フルーツポンチ』(ニジノ絵本屋)や、おばあさんが調理中のやきそばに、酔っ払いのおじさんや音楽家が手を出していろいろな味を加えていく『やきそばばんばん』(あかね書房)など。「はらぺこめがね」が今まで発表してきた絵本は、すべて食にちなんだものだ。絵本作りは、夫婦ふたりの共同作業。食べ物を原田さんが、背景や人物は関さんが描く。
「僕たちは、『食べ物と人』をテーマに絵本を描いています。たとえば先日校了した新作では、“穴”のある食べ物で物語を作りました。ドーナツやマカロニといった食べ物にどうして穴があいているのか? その秘密を紹介する内容です。絵本の制作は、穴のあいている食べ物と、穴がある理由をリサーチするところからはじめました」(原田さん)

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彼らの生み出す作品は、ユーモラスでときにシュール。グラフィックデザイナー出身ならではの大胆かつ繊細な絵のタッチと構図も、独自の世界観を作り出している。だからなのか、絵本という子ども向けの作品にもかかわらず、大人のファンも多い。そんな作品が生まれるのは、居住スペースの一角にあるアトリエ。この空間で、完成間近の作品をチェックする時間は、楽しく、心弾む瞬間なのだそう。
「絵本の内容は、編集者さんから提案されることもありますが、日常の何気ない生活の中で話題にあがった、好きな食べ物が主役になることが多いです。原画を描く作業は1冊ずつ順番になりますが、テーマやストーリーを考える作業は、今もいくつか同時にしています」(原田さん)

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原田さん、関さんご夫妻の出会いは大学時代のこと。
「京都精華大学デザイン学科のクラスメイトでした。卒業後は一緒に上京して、それぞれ別のデザイン会社に就職。2人ともグラフィックデザイナーとして働いていたのですが、仕事内容がお互いに思い描いていたものと違うという思いがだんだんと大きくなっていって……。関が先に会社を辞めて、アルバイトをしながら好きだった絵を描くようになったんです。その一年後に、僕も会社を辞めて、イラストを描くようになりました。でも、このときには2人でユニットを組むことは考えていませんでしたね。絵のタッチも違っていたので。僕自身もまだ、何を描くかというテーマが定まらず、しばらく試行錯誤していました」(原田さん)
一年早く独立をしていた関さんは、友人に誘われて参加したデザインフェスでの似顔絵「顔アート」が好評で、人物を描くことを仕事につなげていくようになる。そんな2人がユニットを組むきっかけになったのは、原田さんがある日、冷蔵庫や家の中にある食べ物を描いてみたことから。

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グラフィックデザイナーから気鋭の絵本作家へ。独自の世界観で食いしんぼうを魅了する「はらぺこめがね」の源とは

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「食べ物っておもしろいな、と感じたんです。食べること、料理をすることはもともと好きだったので。それからは、よりリアルに描くことを追求するようになりました」(原田さん)
やがて、それぞれの絵のテーマが定まったことで、一緒に描いてみるのもおもしろいのではないかと思えるようになり、食べ物と女の子を組み合わせた絵を描いてみることに。思いのほかおもしろい作品が出来上がり、段ボールに描いてイベントで販売したところ評判を呼ぶことになる。これを機に2011年、イラストユニット「はらぺこめがね」を結成。さらに絵本屋「ニジノ絵本屋」のオーナーとの出会いによって、絵本作家への道が開けていく。

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「ニジノ絵本屋」のオーナーに声をかけられ生まれたのが、ごちそうがテーマの『フルーツポンチ』『すきやき』『ハンバーガー』という3冊の絵本。これらの作品がきっかけとなって、出版社などから仕事の依頼が入るようになったという。
「幼いころから絵本を描くことが夢だったので、お話をいただいたときは、ぜひやりたいと思いました。初めての絵本作りでしたが、グラフィックデザイナーをしていた経験が役に立ちました」(関さん)
「その後もずっと、テーマは食べ物。絵本制作を通して『食べ物と人』という僕らのコンセプトがより明確になり、リアリティのある食べ物の表現をさらに追求するようになりました」(原田さん)
食べ物をテーマとした作品を作れば、自然と日常生活での食への関心も高まっていく。梅酒、梅干し、味噌造り、今では毎年恒例となっている保存食作りも、絵本を作るようになってからはじめたのだという。

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一番大切にしているのは食べ物のリアリティ。イメージに合わせた料理作りも欠かせない仕事のひとつ

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原田さん、関さんの絵本制作は、内容にもよるが、実際に食べ物(料理)を作ることがポイントになる。まず、作品のテーマに沿って、リサーチなどしながら描く食べ物のイメージを膨らませる。次にストーリーや文章を、2人で相談しながら考え、全体のラフコンテを。構成が固まったら、ラフに合わせて料理を作り、その料理の写真をもとに作画作業に進んでいく。「はらぺこめがね」の絵本がもつ魅力のひとつでもある、“おいしそう”な雰囲気の秘密は、こうして試行錯誤しながら実際に料理を作っているところにあるのかもしれない。
「自分で料理を作ることで、食材の細かい部分、大きさのバランス、色合いなどが確認できます。彩りなどにも気を使いますね。たとえば『やきそばばんばん』のときには、やきそばが評判のお店に行き、何種類ものやきそばを食べました。自宅のガスコンロで使える鉄板を購入して、屋台風のやきそばを作ったりもしていました。僕にとっての料理作りや食事は、常に作品のリサーチをしているようなものです」(原田さん)

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とはいえ、リアリティを追求するだけではない。自身の記憶の中に残る“おいしそう”も作品の魅力につながっている。
「お子様ランチを描いた作品では、僕らが子どものころに食べたものが作画のベースになっています。記憶をもとに再現したお子様ランチなので、もしかしたら今実際に食べられるものとは少し違うものかもしれませんね。でもだからこそ、絵を見て“おいしそう”という感情を引き出せるんだと思っています」(原田さん)

「はらぺこめがね」のファンにとって、絵本と同じように楽しみにしているのが、2人がインスタグラムで発信している「♯アトリエめし」。食事作りは、下準備を2人で行い、調理は主に原田さんが担当している。
「お昼ごはんやおやつに夕食、友人とのごはんなど、アトリエで食べるごはん全般をアトリエめしと称して発信しています。今のアトリエに引っ越してからキッチンのスペースが広くなり、作業しやすくなりました。このキッチンは、絵本制作をするうえでも欠かせない場所になっています。今日のお昼は、やきそばとごはん、という僕の子どものころからの好きな組み合わせです」(原田さん)
オムレツに使っている濃厚な卵は、近所の日本茶の店で購入しているお気に入り。

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やきそばとおにぎり、オムレツ、かぼちゃの煮物のお昼ごはん

豚ひき肉、じゃがいも、ピーマン入りのやきそば、砂糖と塩を少し加えてバターとオリーブオイルでふっくらと仕上げたオムレツ、おにぎりと梅干し、冷やしトマト、かぼちゃの煮物、オクラと納豆のみそ汁。そして、デザートは八百屋さんにおまけでもらったイチジク。みそ汁は、1歳半のお嬢さん用に朝作ったもので、オクラと納豆を叩いて加えている。
「やきそばは、酢と辛子で食べるのが好きです」(原田さん)

ご近所の食材店との交流や子どもと過ごす時間が日々の気分転換に

ほんとんどの時間をアトリエで過ごしている原田さんと関さん。食事やお嬢さんと過ごす時間、ご近所での買い物がよい気分転換になっているそうだ。
「料理作りは絵本制作の作業のひとつですが、普段の食事作りは仕事の合間の気分転換になっています。お昼が近づくと、仕事をしながら関と献立の相談をして、必要であれば近所に食材を買いに行くこともあります。食事作りに特別なこだわりはありませんが、気持ちの入っていない適当な調理は嫌なので、丁寧に作るように心がけていますね」(原田さん)
アトリエの近所にある八百屋や、米屋、卵を購入している日本茶の店の人たちとの交流も楽しみで、信頼できる作り手の食材そのもののおいしさを知ったことで、料理作りを気負わなくなったとも。
「私はもともと食べることに興味がなくて、ほとんど原田におまかせしていたのですが(笑)。食材店の人たちに食材そのもののおいしさを教えてもらってから、料理作りが楽しめるようになりました。出産をして娘の食事を気にかけるようになりましたが、ご近所で購入している食材なら大丈夫と、あらためて感じています」(関さん)

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「お米屋さんでは、お米マイスターのご主人に献立を伝えて品種を選んでもらい、その場で精米しています。今日はおにぎり用の品種を選んでもらいました。日本茶のお店で扱っている甘くてコクのある卵も我が家の定番です」(関さん)
また、お嬢さんの通っている保育園は、お昼ごはんが評判で、園児の食べたいものを自分で選べるようになっているのだとか。
「選んだおかずは残さず食べるのが約束ごとですが、友達が選んだおかずにも興味を示して、好き嫌いなく育ってくれればいいなと思っています」(関さん)

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 絵本の仕事を通して出会った仲間たちと、「音楽と食と絵」をテーマにしたイベントをしてみたい

「おいしいものはうつくしく、人と人をつなぎ合わせる力があると信じている」という原田さんと関さん。「食べ物と人」をテーマにした絵本制作をはじめたことで、ジャンルの異なる魅力的な人たちとの出会いが増え、今は新たな夢もあるそうだ。
「絵本の仕事を通して出会ったフードコーディネーターやミュージシャンの友人たちと、『音楽と食と絵』をテーマにしたイベントをしてみたいですね。もともと人前に出るのは苦手だったのですが、ワークショップをするようになって少しずつ慣れてきました。絵本の出版に合わせてイベントを開催することもあり、絵本に登場するキャラクターがグッズとして販売されたり、読者の方に直接お会いできるのも仕事のやりがいになっています」(原田さん)
また、日本各地を巡り、おいしいものを絵本にしてみたいとも。
「子育てや仕事のスケジュールの都合で取材旅行にはなかなか行けないのですが、帰省や旅に出るときには、その地域の食に触れるようにしています。その情報や絵を書きとめておいて、いつか1冊の絵本にまとめてみたいですね。そして、今1歳半の娘がもう少し大きくなって、私たちが作った絵本をどう感じてくれるのかに興味があります。気に入ってくれなかったらどうしようと、ちょっと不安でもありますが、反応を楽しみにしています」(関さん)

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原田しんやさん 関かおりさん

VOL.09 絵本とアトリエめし イラストユニット「はらぺこめがね」 原田しんやさん 関かおりさん

原田しんやさん/1983年徳島県生まれ。2005年京都精華大学デザイン学科を卒業後、グラフィックデザイナーを経て、2009年イラストレーターとして独立する。
関かおりさん/1982年大阪府生まれ。2005年京都精華大学デザイン学科卒業後、グラフィックデザイナーを経て、2008年イラストレーターとして独立。
2011年、夫婦イラストユニット「はらぺこめがね」を結成。絵本制作を中心に、挿絵やワークショップの講師なども務めている。新作に『あな あな はてな』(アリス館)などがある。

LOCATION 東京都目黒区

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PHOTOS:SHIN-ICHI YOKOYAMA

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