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里山暮らしと自家製みそ 「archipelago」店主 小菅 庸喜さん

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ABOUT

夫婦でライフスタイルショップ「archipelago(アーキペラゴ)」を運営しながら、住空間や店舗のスタイリング、ブランドの立ち上げなどにも携わる小菅庸喜(こすげ・のぶゆき)さん。風土に惹かれて移住した兵庫県篠山市での「地に足のついた暮らし」は、人、地域との心地よいつながりを生み出しています。

兵庫・篠山の自然と四季に寄り添いながら人と人が交流する場を提供したい

「『地に足をつけて、仕事も暮らしも丁寧に』を心がけています。自分ができることを続けることで共感する仲間が増え、つながりが広がるのが楽しい」

いろいろな街でいろいろな人のライフスタイルと出会う、サーモス日和。最近気になることのひとつは、いろいろな人たちのライフスタイルと食のかかわりだ。「食べること」とみんなは、どう向き合っているのだろう。

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ブランドプランナー時代の経験と出会いがもたらした丹波篠山への移住

店主を務める「archipelago」を拠点にしている小菅庸喜さん。埼玉生まれの小菅さんが家族と兵庫・篠山に移住をしたきっかけは、ブランドプランナー時代の経験と出会いだったという。
「京都の大学を卒業して、東京で就職。その後、転職をして大阪のアパレル企業でブランドプランナーを務めていました。主な仕事はブランドコンセプトの構築やイベント企画など。その経験が今の仕事のベースになっています」
そのころに仕事のつながりもあって足繁く通っていたのが、栃木・益子の「スターネット」。オーナーやお店に集う人と交流する中で、丁寧なものづくり、オーガニックな食を発信するギャラリーとカフェの成り立ちに共感し、自分もそんなショップを開きたいと思いはじめたのだそう。そして、自然と寄り添う暮らしを求めて引き寄せられたのが兵庫・篠山。会社を辞め、ショップの開業準備をしながら、2015年に家族と移住することになる。

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「同じ職場でバイヤーを務めていた妻とショップを開業するために大阪から移り住みました。篠山市に惹かれた理由は、幼いころから好きだった雑木林のような自然が身近にある環境だったことも大きいと思います。住まいも、田園風景が広がる窓からの眺めが気に入った農家の日本家屋との出会いがあり、リノベーションをして暮らしています」

生産者の顔が見える食材が主役の豊かな食卓

「スターネット」で出会った、デザインや狩猟をして暮らす佐田祥毅さんに誘われて、みそを手作りするようになったという小菅さん。兵庫・篠山に移り住んでからは、地元の特産品である「黒豆」を使って仕込んでいるそうだ。
「やってみたらことのほか美味しかったので、黒豆で続けています。黒豆をやわらかく煮て、米麹と塩を合わせ、黒豆の皮も一緒に手でつぶして混ぜます。容器に詰めたみその表面を酒粕で覆うのは、三田市で自然栽培のお米や大豆を育てている山本直樹さんから教えてもらいました」

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酒粕で蓋をするのはカビ予防のためだそうだが、みそと一緒に寝かせることで酒粕が“豆腐よう”のような味わいになり、ご飯の友や酒肴として楽しむことができるという。猟の時期には、佐田さんが猪肉や鹿肉を届けてくれることもあり、豚汁を猪肉でアレンジした猪肉の具だくさんみそ汁にも、この黒豆のみそが活躍している。
「野菜は、ショップの近くで自然農法をしている生産者さんから購入しています。週末にはショップでも販売していて、届けてもらったときに顔を合わせて交流できるのがいいですね」
奥さまの絵里奈さんは、大阪と比べて食材の旬をより感じるようになったそうで、「作り手から直接購入するので、美味しい食べ方を教えてもらえるのがうれしいですね。庭には梅の木があるので、『梅仕事』もするようになりました」

モノと出会う環境に着目したライフスタイルショップ「アーキペラゴ」

篠山市に移住した1年後の2016年に「archipelago」をオープン。JR福知山線古市駅近くにある古い穀物倉庫を改装した空間には、小菅さん夫妻の審美眼でセレクトされた、ファッション、陶器、オブジェ、家具、本などが並ぶ。
「倉庫の改装は、設計事務所『スタジオ ドーナツ』に依頼しました。空間の仕切りにはエッジを効かせてほしいこと、入口から視線が抜ける空間づくりなど、会話を重ねながら好みを共有してもらいました。壁面の格子は、倉庫内の通気や調湿のためのもので、既存のまま生かしています」
商品のラインナップは、小菅さん夫妻が普段から使っていて、好きなものが基本。店内には、ブランドプランナー時代から交流のあるクラフト作家や、作り手によるアイテムがセンスよくディスプレイされている。喫茶コーナーのメニューも、自然栽培のジュースや、地元の竹炭で焙煎したオーガニックのコーヒーなどを選んでいるそうだ。
「一番こだわったのは、この土地に買い物に来るまでの過程、モノと出会う環境も含めて、訪れる人に心地よく楽しんでもらうための空間づくり。モノがワンクリックで買える時代だからこそ、買い物の体験を豊かな時間にするためにはどんなことができるのか、日々探求しています」

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ショップの営業日にはお弁当を持参することが多いという小菅さん。絵里奈さんが作るお弁当も自宅での食事同様、自然栽培の野菜が主役だ。「人と関わることが好きなので、知り合いから無農薬の食材を買うのがこだわりでしょうか。埼玉の両親から自家菜園で育てた野菜が届くこともあります。調味料も体にやさしい製法で作られたものを選んでいますね」

小かぶとにんじんの塩麹炒めのお弁当

五分づきのご飯、大根葉とちりめんじゃこのふりかけ、小かぶとにんじんの塩麹炒め、大野芋の素揚げ、卵焼き、きゅうりのみそ酒粕漬け、紅芯大根の甘酢漬け、具だくさんみそ汁(猪肉、大根、こんにゃく、長ねぎ、白菜)。

作家を訪ねる旅と、家族との時間

「2人でランチをすることはまれですね。仕事の打ち合わせや、お弁当の食材について話しながら楽しんでいます」
夫妻でショップを運営しているため、定休日であってもイベントの準備や出張などがあり、小学1年生の息子さん、3歳の娘さん、そして猫のモンクの家族全員がそろうことは少ないという。
「僕らの出張は山間に工房を構える作家さんを訪ねることが多いのですが、息子が大の滝好きなので、休みが合えば一緒に出かけることもあります。春にはお弁当を持って、桜の名所である篠山城跡で家族とお花見を楽しんでいます。あと、僕の帰宅が遅いときは、だいたい大好きな雑木林で枝ものの採集をしているから(笑)」

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篠山での暮らしは、日常の生活と自然との距離が近い。リビングの窓の外に広がる田園風景を眺めていると、都会暮らしでは感じることのなかった気づきもあるそうで、「窓の外の畑では黒大豆と米を交互に栽培しているのですが、季節ごとの山と空の様子、作物が育つ過程を見るのは本当に美しい。それは、農家さんがきれいにしてくれているからこそ楽しめることなんだと気づきました」
秋には自治会の運動会があり、大人が本気のリレーをして盛り上がるのが恒例になっている。
「体を動かした後に打ち上げをするのですが、そういう場所で地域の人と交流できるのは、外から来た僕らにはありがたかった。お互いを知る良い機会になっています」

篠山の自然を楽しみながら、立ち寄ってもらえる新しい拠点を作りたい

季節の手仕事として自宅で取り組んでいた黒豆みそ仕込み。昨年からは、ショップのお客さんにも楽しんでほしいと、食のイベントを開くようになり、2019年は3月中旬に「黒豆みそ仕込みの会」の開催を予定している。
「みそ作りの先生は、お米や黒大豆を届けてもらっている山本さん。仕込み後に、おむすびとみそ汁を味わいながら、お客さんと交流するのが楽しみです。昨年仕込んだみそは、丹波篠山名物のぼたん鍋にも重宝していて、佐田さんが獲って届けてくれた新鮮な猪肉と、自然農法の野菜を使って作っています。今晩の献立は、ぼたん鍋と、保温燻製器を使った鹿もも肉のスモーク。ご飯は山本さんのお米を五分づきにして炊いています。食材は地元の知り合いが作っているものばかり。贅沢なことだと思います」
最近では、食品ブランドのプロデュースを手がけるなど、ショップで扱う食品も増えている。自分たちが好きで、信頼している作り手のものを、お客さんにも味わってほしい、という思いからセレクトしているそうだ。
「僕にとって食べることは、毎日の楽しみであり、元気の源。友人や地域の人と食事を共にすることで心の元気ももらっています。そんな場をもっと増やしたいので、ごはん屋さんを立ち上げることにも興味があります」
地域で何かを変えたいとは思わない、としながらも、地に足をつけて、ゆっくりとモノの背景にあるストーリーをお客さんに伝えていきたいと語る。
「『archipelago』に彼女とデートに来てくれた高校生が、大人になってライフスタイルショップの仕事に興味を持ち、そしてここに相談に来てくれたら、おじさん何でもしちゃう! そんなつながりが持てたらうれしいですね」

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小菅 庸喜さん

VOL.07 里山暮らしと自家製みそ 「archipelago」店主 小菅 庸喜(こすげ・のぶゆき)さん

「archipelago(アーキペラゴ)」店主。埼玉県生まれ。京都造形芸術大学を卒業後、東京で就職。2007年より大阪「URBAN RESEARCH DOORS」でブランドプランナーを務めた後、2015年に家族と兵庫・篠山に移住する。2016年、バイヤーを務める妻の絵里奈さんとライフスタイルショップ「archipelago」をオープン。自然と寄り添う暮らしを実践しながら、篠山周辺の生産者と企画した食のイベントや、食品ブランドのプロデュースも手がけている。

LOCATION 香川県高松市

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PHOTOS:SHIN-ICHI YOKOYAMA

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