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心くばりと季節のお弁当 「chioben(チオベン)」料理人 山本 千織さん

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ABOUT

宅配弁当やケータリングを手がける「chioben(チオベン)」を主宰し、その料理人として活躍している山本千織さん。遊び心のある食材の取り合わせや調理法、季節感あふれるお弁当は雑誌やSNSでも話題になり、いつも注文の予約でいっぱいなことから「なかなか食べられないお弁当」と、評判を呼んでいます。

お弁当やケータリングを通して 「食」の楽しさを届けたい

「『何が入っているかは、蓋を開けるまでのお楽しみ』そんなワクワクする気持ちを、テーブルを囲む人たちと楽しんでもらいたい。食べる人をイメージしながら、ちょっとした工夫を加えています」

いろいろな街でいろいろな人のライフスタイルと出会う、サーモス日和。最近気になることのひとつは、いろいろな人たちのライフスタイルと食のかかわりだ。「食べること」とみんなは、どう向き合っているのだろう。

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一つひとつの料理にワクワク感や意外性に富んだスパイス をきかせて

朝7時。「chioben(チオベン)」のアトリエの一日は、三升炊きのガス炊飯器でご飯を炊くことからはじまる。今日のお昼までに届ける宅配弁当の注文は約160個(!)。キッチンの壁には、前日に山本千織さんがパソコンで整理した受注先ごとのお弁当の献立が貼られ、その内容を確認しながら3名のスタッフが黙々と準備をしている。作業台にお弁当箱がずらりと並べられた様は、まさに壮観だ。
「私がアトリエに着くのはだいたい8時ごろ。おかずは前日に仕込みをしているので、切ったり焼いたり揚げたりの調理作業は、ほぼスタッフにまかせています。スタッフが確認するリストには、届け先のこと(お客さまの年齢層や仕事内容など)、お弁当の内容やリクエスト、アレルギーの有無などをまとめていて、それを一軒ごとに仕上げてバイク便や宅配の運転手さんに届けてもらっています。今日のようにお弁当の注文が多いときには、千葉に住む母に手伝いに来てもらうこともあります」

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「chioben」の宅配弁当やケータリングは、雑誌やテレビの撮影現場、イベント、企業からの注文が主で、昼食用のお弁当がほとんど。料理の仕上げとお弁当箱に詰める作業には、正確さとスピードが求められる。
「毎日のことではありますが、午前中は時間との勝負。効率よく仕上げるコツや臨機応変な対応は、20代のときに定食屋を切り盛りした経験が役に立っていますね。お弁当を食べるときにワクワクしてほしいので、その場の話題になるようなめずらしい食材を選び、色鮮やかな見た目、意外性のある味つけを心がけています」

スタートは定食屋のサービスから。人との出会いがもたらした「チオベン」のお弁当作り

フリーランスの料理人が手がけるロケ弁当の先駆けとしても知られる「chioben」。その「chioben」をはじめた山本さんの料理人生には、いくつかの転機があり、なかでも人との出会いが天職へと導いてくれたという。
「生まれは北海道山越郡長万部町。札幌の美大に通っていたころは、イラストレーターやデザイナーに憧れていました。ところが思いがけず、大学卒業と同時に料理人と結婚し、札幌で定食屋を営むことになったんです」
飲食の経験のないまま調理以外の実務を担うも、一年半ほど経ったころにご主人が戦線離脱。店だけが残ってしまったため、友達に手伝ってもらいながら、なりゆきで、厨房に入ることになる。
「料理上手な母の手伝いをしていたので、料理を作ることは好きだったんです。でも料理人としての経験はないので、献立はあくまでも家庭料理。現在のようなカフェがなかった当時、20代の女性がやっている定食屋はめずらしかったようで、たくさんの人が常連になってくれました。献立を考えるのも楽しかったですね。そのころのレシピは、今も『chioben』のおかずに生かされています。お客さまの反応を見つつ、型にはまらないおもしろさを求める献立作りをするようになったのもこのころからですね」
定食屋は人気店となり経営は順調だったが、それゆえに忙しさで毎日ヘトヘトに。そんなとき、料理店の物件を探している友人夫婦がいたため、思いきって店舗を譲ることにしたという。
「ちょうど30歳を目前に、これからの生活を見直していたときでした。お店の経営から離れてまずしたことは、海外旅行! その後は、知り合いや、二番目の妹夫婦の料理店の手伝いをしていました」

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季節感とお客さまへの心くばりを料理で表現した独自のお弁当スタイル

妹さんの料理店を手伝って12年ほどが経ったある日、東京の友人からお店を始めるので手伝ってほしいと連絡が入る。2010年のことで、山本さんは40代になっていた。
「その先の人生を予想できるのがつまらないと感じていたときに話がきて、よい機会だと思って上京しました。ただ上京はしたものの…お店の話は頓挫していて。別の友人から紹介されたのが、東京・代々木上原のブータン料理店での手伝いで、ブータン料理を教えてもらいながら調理の助手をしていました。ブータン料理店が夜のみの営業だったので、慣れてきたころにはランチに和定食を出すようになっていましたね」
ブータン料理店での手伝いは、本国から料理人が来日するのを機に2年ほどで退店することになるが、そこで声をかけてくれたのが、近所のバーの店主。バーが閉まっている昼間の時間帯に場所を貸してくれることになる。

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「顔なじみのバーを拠点に、ランチを提供することにしました。食器をどうしようかと考えていたところ、バーの店主さんがお弁当箱に詰めたらいいんじゃない? とアイデアをくれて。これが『chioben』のはじまりです」
このお弁当箱に詰めた定食が、雑誌の編集者やフリーランスのライター、スタイリストなどの目にとまり、撮影現場に仕出しをするきっかけになる。評判は上々で「また食べたい」と口コミでどんどん広がっていった。
「お弁当の献立や彩りは、今でも定食の感覚で考えるのが基本になっています。仕切りがないのも、ワンプレートに定食を盛り込むイメージで詰めているから。めずらしい食材や調味料使いを楽しんでもらいたいので、献立の内容は、基本『おまかせ』にさせていただいています」

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「『chioben』の献立は、定食作りで培ったおかずの基本を決めて、季節やボリューム、お客さまの希望に合わせて、テトリスのように自由自在に組み立てるようにしています。お弁当作りのコツは、時間が経過しても水分が出ないおかずを選ぶこと。定番の春巻きは時間差で皮を二重に巻いて揚げています。白と黄色の食材を意識的に盛り込むと全体が明るくなるので、試してみてください。お弁当の彩りやケータリングの盛りつけのアイデアは、海外の料理本やインスタグラムからヒントをもらうことが多いですね」
ご家庭でお弁当を作るときは、前日の残りもの、その日に作るもの、卵料理や加工品(缶詰め、かまぼこ、ソーセージなど)の3種類のおかずをベースにすると、作り続けるのも楽だという。たまに調味料や香辛料でアレンジすると、なおいいそうだ。

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鶏のから揚げ、ちくわとショウガの春巻きのお弁当

鶏のから揚げ、ちくわとショウガの春巻き、イワシ煮、キョフテ(スパイス入り肉団子)、キャロットラペ、たけのこ煮、たけのこのしんじょ、えびのしんじょとつぼみ菜、黒大根の素揚げ、サラダほうれん草、紅菜苔(こうさいたい)、紅くるり大根、イタリアの菜花、花ワサビ、「ごはんが炊ける弁当箱」で炊いたご飯、はまぐりのスープ(はまぐり、ミニチンゲン菜)。

メリハリのあるオン/オフの切り替えと家族・スタッフのサポートが独創的な献立の源に

山本さんやスタッフが一息つけるのは、お昼の宅配弁当をすべて仕上げて配達業者に託した13時ごろ。
「お昼には、カレーやあんかけご飯を作ることが多いですね。母が手作りのチャーシューを持ってきてくれることもあります。食後には誰かが何かしら甘いものを持ち寄っていて、みんなで食べていますね」
昼食とお茶で一息ついたあとは、夜にケータリングの注文があれば取りかかり、さらに翌日の仕込みに入る。お弁当の注文内容をメールで確認し、お弁当の献立や仕入れる食材を考えるのは、もちろん山本さん。あるとき、お弁当用に作ったおかずは、お弁当箱に詰められている状態のほうが食欲をそそることに気づいたそうで、昼食や夕食でおかずの残りを食べるときには、お弁当箱に詰めるようになったという。
「仕事中は、料理以外の作業をしていても、結局、献立や盛りつけのことばかり考えてしまって…。お弁当の注文メールとスケジュール調整は千葉で母と同居している三番目の妹が手伝ってくれているので、本当に助かっています。気分転換は友人と食事に出かけることですが、外食中は仕事のことを一切忘れて、ただおいしい! と食べることに集中しています」

お弁当作りの経験を生かして 「食」の楽しみを 広げていきたい

「まだ商品化されたものはないのですが、冷凍保存したお弁当の遠方への宅配や、お弁当に合う汁ものをフリーズドライにするなどのアイデアを考えるのが好きなんです。その場のひらめきで、何か思いつくとスタッフに熱く語ってしまうのですが、冷静沈着なスタッフのおかげで暴走せずに済んでいます(笑)」
今まで、人との出会いや、知り合いが与えてくれたきっかけに導かれてここまで楽しんでこられた、と山本さんは謙遜するが、山本さんが作り出す料理のおいしさ、ワクワク感は、何ごとにも興味を持っておもしろがる好奇心から生まれている。そして、その好奇心のルーツは、料理上手なお母さまからの影響が大きいという。
「私にとっての食の原点は、やっぱり母の味ですね。食卓を囲んで賑やかに食べる、「食」の楽しさも教えてもらいました。出身地である北海道では会社を経営する両親と、3人の妹、弟の7人家族で育ったので、家の手伝いをしながら、自然と料理が好きになりました。さらに、よく知られた料理を自分流にアレンジしてしまうのも母譲りのような気がしています」
その独創性あふれるアイデアは、著書『チオベン 見たことのない味 チオベンのお弁当』を発行するきっかけにもなる。
「食べる人を驚かせたい、おもしろがらせたい、という気持ちで料理と向き合っています。不定期で行っている料理教室の生徒さんや、宅配弁当・ケータリングを注文してくださる法人のお客さまなど、幅広い人たちと「お弁当」や「食」を通して交流できる場は、私の大切な居場所です。そんな場所が広がっていったらうれしいですね」

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山本 千織さん

VOL.08 心くばりと季節のお弁当「chioben(チオベン)」料理人 山本 千織(やまもと・ちおり)さん

料理人。「chioben(チオベン)」名義で手がける法人向けの宅配弁当やケータリングを主宰。北海道生まれ。美術大学を卒業後、札幌市内に定食屋をオープン。その後、知り合いの料理店の手伝いを経て、妹が営む「ごはんや はるや」に12年間携わる。上京後、2011年に「chioben」を開業。遊び心を盛り込んだ季節感あふれるお弁当が雑誌やSNSで話題となり、なかなか食べられない「奇跡のお弁当」と評判を呼ぶ。著書に『チオベンの弁当本』(KADOKAWA)、『チオベン 見たことのない味 チオベンのお弁当』(マガジンハウス)がある。

LOCATION 東京都渋谷区

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PHOTOS:SHIN-ICHI YOKOYAMA

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