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VOL.3 自分らしさと旬野菜 料理家 渡辺有子さん 東京都渋谷区

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素材の持ち味を生かした季節感のあるレシピを書籍や雑誌、テレビなどで発表している料理家の渡辺有子さん。独自の感性から発信される丁寧な暮らし、器のセレクト、センスあふれる着こなしにファンも多い。2015年に料理教室「FOOD FOR THOUGHT(フードフォーソート)」をスタート。2017年に同名のセレクトショップもオープン。食にまつわるおいしくて楽しい提案には、豊かな暮らしのヒントがちりばめられています。

料理はコミュニケーション。思わぬ出会いが日々のアクセントに

「料理や食にまつわるモノ、コトを介した コミュニケーションを楽しみたい」

いろいろな街でいろいろな人のライフスタイルと出会う、サーモス日和。最近気になることのひとつは、いろいろな人たちのライフスタイルと食のかかわりだ。「食べること」とみんなは、どう向き合っているのだろう。

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料理を食べること、作ることが好きで、料理家の世界へ

「料理家という仕事をはじめてから、自分の味をずっと探しています」という渡辺有子さん。今では、料理本などで数多くのレシピを手掛けているが、料理家に憧れるようになったきっかけは、高校時代に愛読していた雑誌の『Olive』だったという。
「『Eating』というページが好きで、そこで『料理家』という職業があることを知りました。子どものころ、母や祖母の手伝いで台所にいることが多かったのですが、料理を仕事として意識するようになったのは、このころから。自宅で料理やお菓子を作って、一眼レフで撮影したりしていましたね」

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その後、大学4年生の就職活動では、料理専門の出版社やお菓子メーカーの面接を受けたりもしたが、最終的に選んだのは、やはり料理家。知り合いの紹介で料理家のアシスタント職に就いた。
「結論から言うと10ヶ月ほどでクビになってしまったんです(笑)。そのときは、撮影用に作った何品もの料理を処分する日々に抵抗を感じていましたが、さすがにショックでしたね。ただ、思いがけないことに、久しぶりに出かけたアンティーク屋さんのオーナーが『料理研究家の友人がアシスタントを探している』と紹介してくださり、2度目の料理家への道を歩むことになりました」
新たにアシスタントとしてついた先生は、お菓子やエスニック料理が得意なかたで、「先生の料理にはアイデアがちりばめられている!」とワクワクしながら仕事をしていたそうだ。

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料理教室では、レシピの行間のような部分を伝えていきたい

料理研究家のアシスタント生活から独り立ちし、料理家として働きはじめて20年以上が経つ渡辺さん。着実にキャリアを積みながら、書籍、雑誌、テレビなどを通してレシピを発表していたが、「食を通して、人とつながりたい」と新たにはじめたのが料理教室。2015年の春に「FOOD FOR THOUGHT」をスタートした。
その後押しをしてくれたのが、夫で写真家の五十嵐隆裕さん。やれる力があるのに今やらないなんてもったいない、と背中を押してくれた。

「料理を作るうえでの季節感の取り入れ方、食材をどう使うかの考え方は同じなのですが、教室をはじめて、自分のなかで何を伝えたいのかが明確になってきたように思います。繰り返し作ってもらえる料理を提案したいので、作りやすさも重要に。生徒さんのお顔を見ながら話すことで『そういうことが知りたいんだ』ということも分かってきました。季節が変わったらこの素材が合うとか、調理法のアレンジ、調理道具の使い方など、レシピの行間のような部分を伝えていけたらと思っています」
また、“おいしいものつながり”の友人との会話から、さまざまなイベントが企画されることも。「日本各地に住んでいる料理家やシェフの友人を招いて、特別な料理教室を開くこともあります。アトリエができたことで、人とのつながりも広がっているのがうれしいですね」

こだわりが詰まった、端正な佇まいのキッチンスタジオ

料理教室をはじめるにあたり、アトリエ(キッチンスタジオ)のために選んだ築50年のマンションのリノベーションをインテリアデザイナーの片山正通さんが主宰する「Wonderwall」に依頼。10人以上で使うことを想定し、調理道具や器などがすべて収納できるようにデザインしてもらった。
「まず見た目がきれいで清潔感があること。そして料理は段取りが大切なので、調理がスムーズに進むように見やすく、出し入れしやすい、すっきりとしたキッチンを目指しました。生徒さんにはテーブルセッティングも楽しんでほしいので、試食中はテーブルの引き出しにレシピや筆記用具をしまってもらいます」。料理教室後は、2時間ほどかけて掃除をし、使ったものは食器の水切りかごまで、すべて収納している。
料理教室をはじめて、旬の食材の感じ方も変化してきたそうで、「書籍や雑誌の仕事では、数ヶ月先の季節の食材でレシピを考えていたのですが、料理教室ではリアルタイムで旬の食材を感じることができるので、そのときの食材で即興料理ができるようになりました。今は、撮影と料理教室それぞれの食材との付き合い方を、バランスよく楽しんでいます」

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自宅にこもって原稿書きや事務作業をするときに、自分用のお昼のお弁当を作っているという渡辺さん。朝ご飯の準備のときに一緒に作って詰めておくと、昼ご飯のことを気にせず作業に集中できるそうだ。

初夏の旬野菜のお弁当

枝豆薬味(みょうが、しょうが、青じそ)ご飯、牛肉とズッキーニのマリネ、ディルの卵焼き、厚揚げとオクラの煮物、かぼちゃ煮、白瓜の梅和え。
「このお弁当箱は、ご飯を魔法びんで保温できるので、温かいご飯が食べられていいですね」

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豊かな食卓を提案するセレクトショップ

2017年には渡辺さん自身がディレクションを手掛ける同名のセレクトショップもオープン。料理教室の生徒さんから、アトリエで使っている器やエプロンを購入したい、という声を多くもらうようになり、それに応えるかたちではじまった。アトリエからほど近い渋谷区・代々木上原にあり、炭を塗りこんだダークグレーの壁が印象的な空間は、アトリエと同じく片山正通さんに依頼した。
「もともと私が好きだった、ヨーロッパの古いもの、日本の作家さんの器、エプロン、手作りの瓶詰めやお菓子などを扱っています。ここにあるアイテムは、あくまで料理とつながりのあるもの。それを空間にも表現したくて、中央のカウンターは“おくどさん”(昔のかまど)をイメージしてお願いしました」
スタッフの制服は、ファッションブランド「ヤエカ」にオーダーしたオリジナル。「料理とセレクトしたアイテムとの相性について直接提案できるのがこのショップをやっている意味にもつながるので、時間のあるときには私も店頭に立っています。オンラインでも販売していますが、ここではモノとの出合いを楽しみながら、直接手にとって、手になじむ器を選んでほしいですね」。年に2回、渡辺さん自らパリの蚤の市で買い付けたブロカント(古道具)もショップに並ぶ。

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知らなかったことを知る喜び

食材の買い出しや通勤に車で移動している渡辺さんの愛車は、イタリアの「ABARTH(アバルト)」。デザインと、マットな色合いが気に入って選んだ。「車で移動するときは水筒にほうじ茶を入れて、ドリンクホルダーにセットしています。ペットボトルがもともと苦手なのですが、最近はマイ水筒を持ち歩いている人が多くなりましたよね」。仕事が早めに終わったときには、思い立って横浜や鎌倉にドライブに出かけることもある。車窓からの季節を楽しんだり、カフェで本を読んだりするのがいい気分転換になっているという。「オフのときは、仕事を忘れて家のことをしています。主人が夕食の支度をしてくれるので、一緒にキッチンに立ちながら、私はアシスタントに徹しています」
ご主人の影響もあり「毎年、何かひとつ新しいことをはじめる、知らなかったことに挑戦することを目標にしている」という渡辺さん。お菓子の理論を学ぶために製菓学校にも通い、実習や試験を久しぶりに経験した。大人になった今だからこそ気づいた、知らなかったことを知る喜びを感じながら、日々の料理と向き合っている。

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渡辺有子さん

VOL.03 自分らしさと旬野菜 料理家 渡辺 有子(わたなべ・ゆうこ)さん

料理家。素材の持ち味を生かした、シンプルで作りやすい料理が評判。書籍や雑誌、テレビなどでレシピを発表。丁寧な暮らしぶりや、器使い、センスあふれる着こなしなどに着目した著書も人気を呼んでいる。2015年に料理教室「FOOD FOR THOUGHT(フードフォーソート/“よりよく生きるためのヒント”という意味)」をスタート。2017年には自身がディレクションを手掛ける同名のショップをオープンする。『すっきり、ていねいに暮らすこと』(PHP研究所)、『サンドイッチの時間』(マガジンハウス)、『料理と私』(晶文社)など著書多数。

LOCATION 東京都渋谷区

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PHOTOS:SHIN-ICHI YOKOYAMA

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