第15話 ひとり夏走り~後編

  • 2016.09.05
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前編からの続き~

「ビキニのおねえさんを眺めよう!」なんていう理由で、頑張って海まで走ってきましたが、暑さと疲労、何より腹ペコ過ぎてもうフラフラでした。
そこで色気より食い気。いつもは仲間と来る食堂に、今日はひとりで入る事にしました。
店横の路地の片隅に小さなお社(おやしろ)があり、自転車はいつもその前に停めさせて頂きます。

お座敷へ案内されると、他のお客さまが皆一斉にこちらを見ます。派手でピチピチなウエアですから仕方ありません。
しかも汗だくだし。一瞬何かの罰ゲームみたいに座りが悪い感じもしますが、まあいつもの事です。

そしてまずはノンアルコールビールをゴクッ!シラス丼の定食でウマーッ!
窓の向こうには江の島ーッ!ああ、来て良かった!

腹ごしらえを済ませた僕は、ビーチで悪ふざけした写真でも撮ろうなんて思い、自転車で移動を始めました。
でも…なんとなくビーチの喧騒より、海そのものをもっと眺めていたい感じ。

そこでふと思い立ってUターンし、もうひとつのお気に入り、七里ガ浜へと向かうことにしました。

七里ガ浜までは海岸線を走る、まるでドラマのような道。海は思いのほか青く、風もなんだか澄んでいます。ちょっと渋滞はしているけれど、自転車にはあまり関係ないからそれなりに快適です。

七里ガ浜は海側に大きな駐車場があり、中ほどには一軒のカフェがあります。その店の辺りから眺める風景が僕の一番のお気に入り。防波堤のようになっているコンクリートの、人の少ない場所を選んで自転車を停め、そこに腰を降ろしました。
水平線を眺めながら、海や、空や、風や、光を、全身で受け止めていると、そのエネルギーが浸み込んでくるような錯覚さえ覚えます。しばらくの間、そうして過ごしました。

でも今日は出発が遅過ぎました。次第に夕方が始まろうとしています。さて、帰らねば。

復路はとにかく気持ちを切らさずに、ひたすらペダルを回し続けます。坂道などでちょっと頑張り過ぎると、すぐに足のどこかがツリそうになります。別の筋肉も総動員して、騙しだまし走ります。

途中、休憩を何度も挟みました。コンビニ前で休んでいると、仕事帰りのサラリーマンやOL風の人々が、通り過ぎ様こちらに一瞥をくれます。自分が世の中の仕組みから逸脱したような不安感と解放感を感じつつ、心のどこかで楽しんだりして。そしてまた走りだします。

走って、走って、走って、おお、遂に我が街、自宅に到着!
さすがにグッタリ。ちょっと何もしたくない感じ。

でも部屋に入るなり思い出しました!そういや氷はどうなったのか?って。

中を確かめてみると、使わなかった氷4個がしっかり残っていました!そのうち2個は張り付いて塊になっていたので、ボトルの口に引っ掛かり出てきませんが、もう2個は取り出せました。夏の湘南まで往復したその氷を、何となく記念にオレンジジュースへと浮かべ、疲れた身体にキューっと流し込みました。今年の夏は、こうして過ぎてゆきました。

この記事へのコメント

ほな

セパレートのお姉ちゃんが見えた。

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