第44話 Pride of hometown(前編)

  • 2017.11.20
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【黒田の視点】
その日も僕はいつものように、東京湾岸エリアの大型ショッピングモールで、コーヒー豆の試飲販売をしていた。 場所柄、お客様はファミリー層が多く、家族との休日を楽しむ人々が行き交っていた。 僕が販売している場所はモールの奥の方で、周辺住民が利用しやすい出入口の近くだった。 そのため目の前をたくさんの人が通る。しかしある一人の少女は、先ほどから何度も行ったり来たりしていた。 視界の端に僕を捉えながら、あえて往復している感じで…。
【少女の視点】
その日も私はいつものように、ウチの近くのショッピングモールで、パパとランチをした後のお散歩を楽しんでいました。 土曜日はママがお仕事なので、いつもパパとこんな感じで過ごしていました。いろいろ見ながら歩いていたら、急にパパが足を止めて、スマホを見せながらこんな事を言いました。
「あそこのおじさん、この人に似てない?パパ、柱の陰に隠れているから、ちょっと偵察してきてくれない?」
私は画面をよーく憶えてから、コーヒーを淹れているおじさんの前をさり気なく通り過ぎ、横目でちらっと顔を確かめました。 何度か通ってよく見てから、パパの所に戻って言いました。
「うん、この人だと思う!」


【再び黒田の視点】
突然一人の男性が近付いてきた。そしてスマホの画面を僕に見せながらこう言った。
「あのう、もしかしてこちらの方ですか?」
そこには、クラブサーモスのコラムニスト紹介ページにある僕の画像があった。ハイ!ボクです!黒田と申します!
「わー!コラム、いつも読んでいます!いやあ、なんか似ているなあと思ったけど自信なくて、娘に画像見せて確かめさせたんですよ!笑」
男性の後ろには、さきほど何度も往復していたその少女が、はにかんで立っていた…。


この突然現れた男性と少女=小林さん親子との出会いは、こんな風にして始まった。
小林さんと娘さんは、いつものお散歩コースに「時々コーヒーの人に会う」というオプションを加えてくれた。

「小林さん親子で、コーヒーセミナーにも参加して頂きました!」

小林さんは新潟テレビ21という地方局の営業マンで、広報的な案件でサーモスと仕事をされていた。 サーモスの担当者が僕と同じ人だったため、僕がそのショッピングモールで試飲販売をしている事を聞いていたのだった。 なるほど、それならご存知でも不思議はない。だが、恐らくそんな繋がりが無くても、彼は僕を見つけただろう。 なぜなら小林さんは「社内の人間より、サーモス愛に溢れています!」と、サーモス社員に言わしめるほどのサーモスフリークだったのだ。 当然、クラブサーモスのチェックは欠かさないし、僕のコラムも読んでくれていた。 それどころか、このサイトが運用開始になった日付まで憶えていたほどだ。


その後小林さんと親交を深める中で、彼の溢れるサーモス愛に感動すら憶えた。そして次第に沸き上がる疑問、その愛は一体どこからやって来たのか? 大胆にも僕は、彼に公式なインタビューをしたい旨、申し出たのだった。

~後編へ続く
【おまけ】
小林さんの娘さんにも、僕は驚かされた。 なぜなら、僕がコーヒーをドリップする時の解説をあっという間に憶えてしまい、その次に来た時は、僕が言うより先に全て唱えてしまったからだ。 ある時はお友達と二人で来てくれて、その友達を紹介してくれたりもした。僕は、娘さんにとって最年長の友達になれたらいいなと思った。




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