第24話 Starting Over

  • 2017.01.16
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2017年最初のコラムです。本年も宜しくお願い致します。
とはいうものの、年が明けて早くも半月以上経つのか。ちょっと今更なご挨拶で恐縮です。
今年の仕事初めは東急ハンズ新宿店での試飲実演でした。
実演を始めて最初に立ち止ったお客様は、偶然にもカフェ開業志望の方で、現在カフェスクールに通って勉強中とのことでした。 コーヒー片手に(試飲のだけどね)開業への想いを熱く語る姿は、自分にも「その頃」の気持ちを思い出させるのには充分過ぎるものでした。

僕は、今でこそ珈琲焙煎士として自分で立ち上げたブランドで活動していますが、そもそもの始まりはカフェをやりたいと思った事がきっかけでした。 でも当時は飲食に関して素人だったので、僕もカフェ開業のノウハウを学ぶためスクールに通ったのでした。 つまり「その頃」と正に同じ境遇の人がやって来た訳です。だから話を伺ううちに僕もつい熱くなって、いろいろと語ってしまいました。 いつものことですけどね。
僕より少し若いと思われるその男性は、元々自動車のメンテナンス関連の仕事を長くやってこられたそうですが、いろいろあって(そうね、皆いろいろあるんだよ)そのキャリアを離れ、たぶん巡り合わせなんでしょうけど、カフェを始めたいという思いに辿り着いたようです。 そしてスクールの存在を知り入校。その日はたまたまコーヒー器具を買い求めに来店され、そこでコーヒー豆の試飲実演に出くわした、と。

彼が語る調理実習やエスプレッソの練習、開業ノウハウのことなど、どの話もあの頃の自分だったら大変ホットな、最大の関心事ばかりです。だから語る事全てが肌感覚で理解出来ました。 僕はあの頃抱いていた「不安と期待が入り混じった奇妙な高揚感」を久しぶりに思い出しました。
それは薄暗くて先の見えない草原を、とにかく全力で走りだすような感覚。 自分がどこにいて、どこに向かっているのか、いや遠くに星が輝いていて、そっちが進む方向だとは感じるけど、道なんかどこにも無くて、自分が踏み倒した草の跡が後ろにあるだけ、みたいな。
ああ、書きながら手に汗かいてきたよ。

でも一方で、もうひとつ強く思ったことがありました。
それは「今の自分はどうなのか」ということ。
今いる場所から見える何かに恐れをなしていないか、全力とは言わなくてもベストを尽くせずにいないか、そして何処へ向かおうとしているのか。
ああ、書きながら変な汗かいてきたよ。

日々の暮らしで起こる小さな偶然に対して、過剰な意味付けをしようとは思わないけど、新年からいきなりこんなこと考えさせられる出逢いがあると、何か不思議な感じもします。

ただそんな毎日の何気ない出来事からも、何かのヒントを得ようとしたり、面白さを感じたり、ドラマを見つけたり出来たなら、きっと豊かな人生を送れるに違いない、とは思います。
そういう意味では、年の初めに思い出させてくれたこの「初心」の中に、今年をサバイブしていく為の、僕にとってのヒントがあるのかもしれない、、、なんてね。


この記事へのコメント

ほな

美味しいコーヒー。思わずゆっくり。

ほな

きれいな富士山。

*

自家焙煎のコーヒー美味しいですよね
美味しいコーヒーは、至福の時間ですね。黒田さんも勤めを退社され これからが大変だろうけれど 応援しています

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