第242話 ふぅちゃんのブレンド

  • 2026.02.05
  • 83
  • 2
僕の店にはいろいろな年齢の常連さんがいます。そのうち最も若い常連さんはまだ乳幼児の“ふぅちゃん”です。元々はふぅちゃんのパパとママが常連さんで、ママは妊娠中もたびたび来店していたほどです。恐らくふぅちゃんの身体の一部は、僕の淹れたアイスカフェオレで出来ているはず。つまり生まれる前から当店の常連さんというわけです。そんなふぅちゃんが先月ついに1歳の誕生日を迎えました。そして一緒に来店したママからこう言われました。「1歳記念のブレンドを作ってくれませんか?」と。おおお!サプライズで作ろうかと考えていた矢先に言われてしまった…。
生後2ヶ月が過ぎた頃にご来店の様子
ブレンドを作る時、僕はいつも2段階で考えます。1段目は「コンセプトやイメージを考える」です。今回はようやく1歳となったベイビーの記念ブレンドです。フレッシュで甘くてクリーン、何というかまだ何事にも毒されていない感じ?そして誰からも好かれるような優しさ、といった印象の味わいにしたいと思いました。2段目はそのコンセプトやイメージを実現するための「豆選びと、焙煎度合いの決定」です。いつもならお決まりのラインナップから選ぶしかないのですが、この時たまたま普段は取り扱わない生豆「コスタリカ」を仕入れたばかりでした。
コスタリカ カンデリージャ ハニーという豆です。
コスタリカ。中米にある、北海道の6割程度の大きさの小国です。山脈が連なり、国土の半分は海抜500m以上の高地で、コーヒー栽培に適した場所です。そしてあまり知られていないと思うのであえて書きますが、この国には特筆すべきことがたくさんあります。まずは優れた環境先進国であること。国土の約25%が国立公園や保護区に指定され、世界の動植物種の5%もの種が生息しています。豊かな自然を背景に「エコツーリズム」が生まれた場所です。また環境保全のため国内の電力の98%以上を風力や水力、地熱といった再生可能エネルギーで賄っています。
甘く焙煎したいのに、僕には難しくて一生掛かる気がする。
そして優れた社会政策を実現している点も注目です。一番すごいなと思うのは、独立国でありながら軍隊を廃止したことです。1949年に当時の大統領が『兵隊の数だけ教師を』というスローガンを掲げ防衛費をゼロに。その予算は教育や医療・福祉へ回しました。憲法にも国民総生産の6%以上を教育予算に充てることが明記されています。高い教育水準が実現したおかげか、安定した社会基盤が築かれています。イギリスの財団が調査を行っている「地球幸福度指数」では上位の常連で、3回連続で首位になった「幸せの国」でもあります。
ブレンド作りの様子。配合比率を少しずつ変えてチェックします。
そんな国で作られるコーヒー豆も際立った特徴があります。それはクリーンで甘く、高品質なコーヒーだということです。国として栽培品種を限定するなど、量から質へと転換するさまざまな動きがコスタリカコーヒーの品質を高めることに繋がっています。今回たまたま思いつきで取り寄せたコスタリカですが、こんなコーヒーこそ、これからの未来を担う子どもへ贈るのに相応しいと思えました。当店にとってはラインナップ的にも新鮮です。ふぅちゃんのブレンドはこの豆をメインとして作ることにしました。現在はテスト焙煎を済ませ、あらましのイメージは出来上がっています。
最終的な仕上がりの確認。気に入ってもらえるかドキドキです。
明日、つまりこのコラムを書いている翌日に最終的な焙煎を行い、ブレンドの中身を決める予定です。コラムが公開された頃には常連さん達と共に完成したコーヒーを味わっていることでしょう。ふぅちゃん自身がコーヒーを味わえる”その日”が来るのは、まだ先のことになります。ただ近頃は大人達の身勝手な都合がまかり通っている世の中で…。だから”その日”が今日と同じようにコーヒーを淹れてあげられる世界なのか、ちょっぴり不安です。せめて僕の手の届く範囲くらいは美味しいコーヒーが淹れられる世界であるよう、頑張るよ。
平穏にコーヒーを楽しめる日々が続きますよう。


この記事へのコメント


そやてる

とても良い話、ありがとうございました。


ポンちゃん

ふぅちゃん自身がコーヒーを味わえる”その日”が来るのが楽しみですね! 平和な時代が継続すると良いです。


ぽんで

素敵な話だなあ。


hirune

唯一無二ですね~!ステき


コーヒーブレイク

素敵なお客様ですね!

ニックネーム

※投稿時にこちらの名前が表示されます。
※投稿にはニックネームの登録が必要です。

コメント投稿にはログイン・
ニックネームの登録が必要です