スペインとドイツで、「食う・寝る・歩く」〜歩く編〜

  • 2025.07.08
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フランスからスペインにある聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラまで(フランス人の道)の全長約800kmの道のりを歩く旅。今回歩ける日程は6〜8日。「前回の終了地点のログローニョから約140km先のブルゴスか、その20〜30キロ先までいければいいかなあ…」というゆるめの設定。「どこまで歩いていても時間になったらマドリードに戻ればOK!」という軽いノリが大切なのだ!ゆっくりと歩き旅がスタートします。

DAY1 ならし歩きは出会いの奇跡から始まる
突然の出会いのおかげで無事に旅が始まりました。
ログローニョの駅を出たものの、前回の遠い記憶をたどってみると巡礼ルートは駅からだいぶ離れていたはず…。巡礼路の道しるべを探して歩いていたときに、男性が声を掛けてくれた。巡礼者はバックパックにホタテ貝を吊してあるので、それだと一目でわかる。
「巡礼路のルート上に僕の家があるから、案内するよ。」突然の出会いが旅の展開を大きく変えてくれるのが歩き旅に起きる奇跡。ルートに戻れた僕たちはやっとここから巡礼の旅が始まるわけです。この出会いがなかったら僕たちはもっと無駄に歩いていただろうな。
ルート上を順調に進む僕たち。
この日はならし歩き。明日からは1日25〜30km程度歩く旅になる。初日は19km程度歩いたあたりの村まで進み、宿をとって旨い飯を食べたらミッションコンプリートだ。
無事に到着した僕たちは、“おじいちゃんと娘”のような関係の愛に溢れる二人がやっている教会そばのバル(BAR)に入り夕食とビールを堪能したらそのまま夢の中…で初日は終了しました。
旅人が金網に落ちていた木の枝で十字架をつくる。いつの間にかたくさんになってオブジェのようになっていた。
「注文ちゃんと聞いたの?」「見てごらんよ!ちゃんとやってるよ…」そして大笑いが起きる仲良しのふたり。おかげで美味しさも2倍増し!
DAY2 土砂降りあとの洗濯祭り
雨の日こそこのボトルに熱々のお湯を入れる=休憩時のホットドリンクが楽しみに。
窓を開けたら外は土砂降り。最も歩きたくない天候だけど、こんな天気でも先に進むのが歩き旅の醍醐味でもある…はず。レインウェアを着て、荷物も濡れないように防水にしたら出発。
土砂降りの日はただただ歩くのみ!休憩だけが唯一の楽しみ。
雨粒がレインジャケットに強く当たる音で、歩いていても3人の会話がなかなか聞こえない…。コミュニケーションが取れないと、歩いていても楽しくない!こんな日のモチベーションは“美味しいものとちょっといい宿”に限ります。特に長谷部家はこういったシンプルな目標は効き目があるのを僕は知っているのだ。
雨宿りができる小さな屋根の下で食べたフリーズドライのお汁粉は、思いの外僕たちの士気を上げてくれました。上がる気分とリンクしてか、天気もこの日のゴール間近で回復。そして旨い飯にありつけたのでした。
巡礼路には、こういった小さな屋根が時々あるので助かりました。
いざ、お汁粉タイム!あんことお餅がまた歩く気持ちを湧かせてくれます。
忘れちゃいけないのは旅の洗濯。全日程分の服なんて荷物が重くなって歩きの自由を奪うだけなので、持ってきたのは2日分のみ。そして今日の装備はビショビショ…。ホテルチェックインと同時にコインランドリーを探し、このタイミングで一気に洗っておきます。海外製のきつめな柔軟剤の香りを帯びたホカホカの服で明日に備えたのでした。
町の人に交ざりながらの洗濯タイム。
DAY3 はしご酒とサッカーゲーム
巡礼者仲間のドイツ人。このあとドイツに行くことを伝えると、オススメの場所をいろいろ教えてくれました。
巡礼の旅の面白さは、世界各国の人と一緒に歩けること。フランス人やドイツ人、イギリス人などたくさんの人達と何度もすれ違い、そして「ブエン・カミーノ!(良い旅を!)」の言葉を掛け励まし合いながら歩く。いわば同士になっていくわけです。
おしゃべりさんと、無口さんと、天然さんの3人組。このメンバーとは何回すれ違ったことか。
たくさんの人とすれ違い、会話を楽しみながら27kmほど歩いたあたりで宿にチェックイン。洗濯、教会に挨拶、スタンプ、カフェ休憩の流れを終えた後、楽しみのバータイム!
毎回ゴール地点の街の教会でスタンプを押していきます。これもひとつの楽しみ!
賑やかな小ホール形式のバルを一軒目にして、ショーケースに並ぶメニューの中からめぼしいものを選び、パンとビール(娘はフレッシュオレンジジュース)で楽しむ。この時間が一日の締めくくりの幸せ時間です。腹4分目位でレンガ造りの小さな街をブラブラ歩いて2軒目へ。ビールとつまみに舌鼓をうっていたときに、目に入ったのは人形をクルクル回して遊ぶレトロなサッカーゲーム。「これで遊んでいい?」とマスターに聞くと、ニヤニヤした顔でサッカーゲームを親指で差し、こっちに来いといったジェスチャーで僕たちを呼び始めました。
白熱のサッカーゲーム。この試合は娘に軍配が上がりました。
このゲームはマスターお気に入りのゲームだけど、最近やる人があまりいなかったそうでマスターも合流して白熱のサッカータイムが始まりました。
とても古いゲームなので、時々コインが詰まる。そのたびに始まる修理タイムとタイミングを合わせて僕たちはドリンクタイムを挟み、サッカーを楽しみます。あっという間にもう良い時間。慌ててホテルに戻ってこの日は就寝となりました。

DAY4 ボーッと歩いて道迷い
早朝の準備も各自テキパキ。昔は手間がかかったなあ…と思い出しちゃいます。
4日目となると少し身体がなれてきて、暗い内に歩き始めて距離を稼ぎ、途中の小さな村で朝食を食べます。そんな進み方は歩みが遅い僕たちには合っているようだ。…と思ったのもつかの間、お店を出てから1時間。少しルートを外していることに気付きました。
この美味しそうなサンドイッチを胃に収めた瞬間から道迷いが始まりました…。満腹って怖い!
「さて、どうやってリカバリーをするか?」の図。
まだ朝早く村からほとんど人が出ていないため、誰かに聞こうにも聞けない!最近の旅は、そんな事態もスマートフォンのおかげでリカバリーがだいぶ楽になりました。調べたところ選択は2つ。「ここから8km余分に歩き、通る予定の村をひとつ飛ばしてルートに戻るか?」「1.5km直線的に丘を越えて、村を飛ばさずにルートに戻るか?」長谷部家の選択は即答で1つ。丘を越えるルートだ!
スタートは心地良い森の中の道で、野鳥の声が木々の中を響かせるバードシャワーを浴びながらのハイキング。「この道は大正解だね!」なんて話しながら歩いていました。長谷部家の旅に、そんな幸せな時間がずっと続くわけがありません…。巡礼ルートに戻る直前は小麦畑のドロドログチャグチャの道が立ちはだかりました。娘と奥さんは悲鳴!一歩歩くごとに靴底には泥がくっつき、靴底の厚さと重さはどんどん増していく始末…。
この時は「この道で正解!」と楽しかったのですが、この後が地獄でした(大変すぎで写真なし)。
どうにか脱出した僕たちは用水路で靴底や滑って転んだお尻の泥を洗い、少し進んだ先の村でコーヒーと甘いパンで小休憩。無事にコース上に戻れた僕たちは、気を取り直して歩き続け、先のちょっとした街で宿をとり、そしてこの日も旨いビールとワインに舌鼓をポンと打ち、落ちないパンツの汚れと同じくらいの泥のように眠りにつきました。

DAY5 馬とリーサルウエポン
夜明け前に歩き始めると、各家の玄関にはその日のパンがぶら下がっていました。この文化、いいなあ。
暗い時間に6〜7km距離を稼ぎ朝焼け前の静かな小麦畑を抜ける。だんだん赤から朝色に変わる光を浴びながら森の方へ向っていると、森の奥から突然馬が数頭やってきました。飼い馬だろうけど、静かで綺麗な空気の中現れた馬たちはとても神々しく、そして突然の出会いでも不思議と恐怖感はまったく湧いてきませんでした。しばらく馬たちに癒され、ひとまずここから20km程先にある小さな村を目指します。
馬がすんなりと触らせてくれる。この瞬間、受け入れられた気がして嬉しかったなあ。
この日、僕はリーサルウエポンの「旨い飯」を使う事に決めていました。「今日のランチは旨いよ〜。頑張って歩こう!」「それ、最高だね!楽しみだね〜」ほんの少しテンポも速く道を進み、心地良い森の休憩所まで来ました。僕のリーサルウエポンは、日本から持ってきたフリーズドライのカレーとカツ煮、白米と味噌汁。そしてデザートにお汁粉と甘酒という素敵すぎる定食(日本では決してこのような組み合わせはしないですが…)です。ボトルから熱々のお湯を食材に注ぎ、待つこと十数分。僕たちの前には日本食がずらりと並びました。
「もう少しで旨い飯だ!」と何回もいいつつ、ほどよいランチポイントを探します。
料理とは言えない簡単な作業だけど、いままでの人生の料理当番のなかで一番感謝された気がしました。
日本を出発してから8日目、美味しいのだけれどそろそろパンにトマトやハム、ピクルスなどには少し飽きていたので、ここに来て日本食というのは五感全てが雄叫びをあげて喜びます。僕たちはあっという間に平らげ、動けないくらい満腹になりました。
この日はアルベルゲという巡礼者用のドミトリー宿に宿泊。ドミトリーといってもこの日の宿泊者は僕たちともう一人のみ。ほとんど貸し切り状態での宿泊で、これはもの凄くラッキーです。宿の方達は温かく、出てくるご飯もワイン付きで満足。2段ベッドに体重を預け、ぐっすりと眠りました。ベッドとご飯でひとり3,000円程度。もう、最高!
アルベルゲの3段ベッドの上は娘。寝るまでずっと僕の視界で足をブラブラさせていました。
DAY6 この辺でいいかもね
アルベルゲでは、他の人を起こさないように共用スペースでもヘッドライトで朝食を済ませて出発です。
外がまだ暗い時間、電気が消えたままのパブリックスペースで荷物の準備。ヘッドライトの明かりで朝食を食べたら6日目がスタートです。
簡素ながらも存在感を感じる十字架が頂上に置かれた峠を越えると、眼下にこの旅初の大きな街が見えはじめました。“見える”といっても日本中から見える富士山のようなもので、きっとあと20km弱はある。でも、久しぶりの大きな街影に僕たちの足も速まります。
道標にもなってくれている十字架。黙々と歩く途中に出会うと少し安心します。
眼前にはブルゴスの街!いざゆかん!…が遠かった。
だいぶ歩いたのに街はいっこうに近くならない…“逆富士山効果”は疲れも倍感じてしまうのが人間の性。それでも歩みを進め、ビュンビュン通る車やロードサイドのお店が始まった頃に休憩を挟み、下校する制服姿の子ども達の集団を抜けつつ大都市に来たことを感じ、ブルゴスまでたどり着きました。距離的にはこの旅3番目くらいなのに、最後が長かった…。ブルゴスの大聖堂の前で写真を撮ったとき、3人目を合わせてうなずく。そう、今回の歩き旅はこの辺でいいかもね!
ブルゴス大聖堂前にて。大都市に到着した僕たちは達成感で満たされました。
歩いてたどり着いたブルゴス大聖堂は、中に入るとちょっとじんわり来るものがありました。
僕たちは宿を2泊分手配して、ゴールの乾杯をしました。久しぶりの大都市はまぶしく、洗練されていて、観光客も多い。僕たちも洗濯や荷物整理をし、そしてスウィーツやちょっと贅沢なレストランを堪能して2泊過ごし、電車でマドリードに戻ったのでした。
通ってきた村には無かったビールの選択肢。もう、幸せがこみ上げます。
まずは一杯目。お祝い!に乗じて全種類いただきました。
マドリードでは奥様が目を付けていた雑貨屋さんで“たくさん”買い物をして観光的時間を過ごした僕たちは、今回もうひとつの目的、ドイツに向けて出発をしました。
ドイツの旅は、また次回!


この記事へのコメント


おこめ

いいですね!すてきです


スッチー

良いです。


ぽんで

本当に楽しそうですね。


ai

楽しさが伝わってきます


コーヒーブレイク

異文化満載な素敵な旅ですね!

  • スッチー

    素敵です。す


hirune

冒険感満載でしたね!

  • スッチー

    素敵です。

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