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あるを尽くすきのこ料理

  • 2021.11.25
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蓮池 陽子



春の山菜からはじまった私の信州暮らしですが、秋も深まりきのこ狩りが終わるころ、本格的な冬の到来を迎えます。「山に3度雪が降ると、4度目には里にも雪が降る」と地元で言われ続けていますが、紅葉した葉がすっかり落ち、山が木の樹皮色と針葉樹の緑の2色になる11月下旬頃から12月上旬には里にも雪が降り始めます。
人々は毎日のように初雪を天気予報で確認し、家の周りを雪囲いし(※1)、スタッドレスタイヤに替えて、冬中食べる野菜を保存します。せまり来る根雪に備え冬ごもりの仕上げにかかるのです。東京で暮らしていただけでは全く知り得なかった暮らし方でした。
短い秋はせわしなく、稲刈りが終わると、待っていました!きのこのシーズンに突入です。今年は幾度となく森に入りましたが、たった2日違うだけで出会えるきのこが異なり、目には見えていないけれど刻々と変化しているのを実感しました。
私のきのこ師匠のK氏は野沢菜の発祥の地、野沢温泉出身の方で、子どもの頃のバイトがなめこの軸きりで、若い頃は地元の森林組合にいて、本当に博学な方なのです。
その師匠に教えてもらった中でいちばんの驚きは、
「きのこは、傘がしっかり開いてからがおいしい」ということでした。スーパーのなめこの少なくとも10倍以上ある大きさのなめこでないと、味がのってなくておいしくないのです。
トマトや果物と同じで、木や土の栄養分を十分吸った状態で熟したものでないと!だそう。
実際になめこをしゃぶしゃぶにして食べたのですが、うまみや食感もいつものなめことは比べものにならないおいしさなのです。軸がおいしいのも新しい発見でした。
なめこ以外のきのこも大きいものが採り時で、目安となるのがカモシカ。カモシカの食べ跡がきのこのおいしさの目安なんですって!動物はよく知っているのですね。
そしてもう一つの驚きは、きのこはキレイ好きということ。この言葉だけ聞くとキョトンとしてしまいますが、きのこが出てくるところは、下草が少なく(または刈ってあり)光が当たるところだそう。実際、村の人が手入れをした林道のすぐ脇にでてきていました。
どおりで、、これまで散々山を歩けど歩けどきのこに巡り合わなかったわけです。笑
師匠のおかげできのこの新しい知識が注入され、ますますきのこ狩りが楽しくなってきた頃には短い秋が終わり、きのこ達に会えるのは来年になってしまいました。
原木や天然のきのこは旨味が強いものが多くて、極力シンプルに料理することを心がけました。
なめこは師匠伝来のしゃぶしゃぶに、なめこの出汁に重ねるようにきのこ鍋をこしらえ、最後は、複雑味をおびたスープでリゾーニ(コメ型パスタ)を吸わせてオリーブオイルをかけていただきました。動物性のものはチーズぐらいなものですが、それで十分。野生の味わいは強く、キノコ尽くしで十分満足できました。
ローカルでは「あるを尽くす」(※2)で組み立てられた料理が最高のご馳走です。
山間地において、マグロやカツオはいらないのです。その地域にあるものを十分に活かしきる料理が大事。今後も春と秋、ゲストと自然のものを収穫し、一緒に料理して食べるという活動をしていくつもりです。
皆さんも機会があれば北信州をお訪ねください。
※1雪囲い
降雪量の多い地方で、家を守ろうと、家の周りに柱を立て横木を渡して蓆(むしろ)などを張るもの。
※2「あるを尽くす」
本来松本エリアの方言で、あるものを食べ尽くすという、出されたものを残さず食べるという意味ですが、私はローカルな食材で最善を尽くして料理をするという意味で使っています。


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蓮池 陽子 Yoko Hasuike

料理家 フードデザイナー 東京都出身。Atelier Story主宰

中央大学卒業と同時にビストロに勤務。その後料理教室で料理・製菓講師を務める。さらにアウトドア施設からの依頼をうけ、アウトドアでおいしく・楽しい料理を生み出し、伝えてきた。

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この記事へのコメント

2021.11.30 09:17
森のキノコも色とりどりで綺麗ですね
江戸っ子
2021.11.28 13:33
キノコ取りで運動し、今度はキノコ料理を食べて最高に羨ましいです。
町の修理屋
2021.11.26 09:32
キノコの多さにびっくりしました。
ほな
2021.11.25 11:50
山からの恵みがたくさんですね。
野生のキノコは食べたことがないので、一度食べてみたいです。
だあきち
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