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旅とボトル〜パン<おむすび〜

  • 2019.06.14
  • 267
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長谷部 雅一



フランスからスペインの端まで続く巡礼路の歩き旅は後半をむかえ、少しずつ前へ進む旅が続く。大人からすれば日々美しい景色とスペインの立ち飲み的存在の“バル”があるだけでどこまででも歩けてしまうけど、娘にとっては単調で飽きてしまうのも否めない…。
トレイル上に移動式青空カフェを発見。僕たちは冷たいドリンクを求めて走り出す。巡礼路には時々こういった小さなカフェがあったりする。
僕と奥さんはビール。娘はこの後自分でオレンジジュースを注文した。どんな場所でも生搾りジュースが飲める率が高いスペインは、子連れ旅にとってはありがたかった。
娘にとって道すがら必要なのは、歩きの他に何か楽しいことなのだ。
「ねえパパ、何かして遊ぼうよ」
「ねえママ、歩くの飽きてきた」
というフレーズが一日の中で何回か訪れる。この言葉がポツポツ出はじめたらこちらもエンターテイナーとしてなにがしかの楽しみを提案せねばならない。
娘が求める遊びは、おにごっこやかくれんぼ、そして木登りにしりとり…と様々。だいたいの遊びは一緒に楽しめるけど大きな荷物を背負っている僕にとって鬼ごっこだけが唯一大変で、いつも始まって5分もしたらゼエゼエ息を荒げてギブアップしてしまう。
ルート確認がてら家族で休憩する時間も大切。娘の体を休めることが目的だが、結局しりとりがはじまってしまう…。
ルート上にある小さな町での補給は娘にとっても楽しみなポイント。どこかにあるだろう日本でいう駄菓子屋を求めてルンルン走り出す。
時に家族でダラダラ話すのも娘にとって楽しい時間になったようだ。特にふざけ話から生まれた企画をちゃんと実行するのも副産物的に楽しい。
出会いもまた旅の醍醐味。突然地元のご夫婦に呼ばれたと思ったら、ワイン付きのBBQパーティーが始まった。急がない旅はこの貴重な時間を堪能できるのだ。
巡礼者専用宿“アルベルゲ”では様々な国の人と語らい、大人にとってもたくさんの刺激を受けた。娘は二段ベッドの上が刺激的だった様子。
そんな話の中から大きく分けて2つの企画ができた。ひとつは、途中の村で一番高級なホテルに泊まること。首都だと数十万円を優に超える高級ホテルも、村一番となると数万円で済むのでこれはプチ贅沢として実行決定となった。
僕の朝の儀式は、ひとりでゆっくりボトルいっぱいにお湯を沸かすこと。この時間はひとりでゆっくり過ごすことができる。
そしてふたつめは、おむすびを食べること。これは僕が密かに持ち込んでいた、お湯を注げばできるという緊急用にとっておいたおむすびだ。この存在を知った娘は、ずっとパンとパスタの生活に飽き飽きしていたこともあり、歩くスピードが1.5倍には確実になった気がする。そういうところはきっと僕に似たのだろう。人生は目の前にニンジンをぶら下げるのも大切なのだ!
おむすびは、「おむすびを食べるのに素敵な場所を探す」という新たな目的も生んでくれた。僕たちが理想とした“おにぎりポイント”は、木陰で風が通り、座れる木があること。できれば景色も良い場所だと望ましい…。その景色を求め途中のバルやカフェには見向きもせずに前へ前へと進んだ。
歩くこと数時間。娘が見つけた場所はまさに理想的な場所。僕らはそこでおむすびタイムにした。お湯で戻すだけだからいつものおむすびと比べたら味はどうしても落ちる。でも、今の僕たちには最上の味だった。
待ちに待ったおむすびタイム。各自が好きなおむすびと汁ものを選んだら、僕がお湯を注ぐ。
娘いわく、「スペインで一番美味しい食べ物だった」とのこと…。親としてはなんとも言いがたい気持ちになってしまう…。
小さなイベントを繰り返すこと数日、僕らはどうにか今回の目的地であるログローニョまでたどり着くことができた。
旅の後半になると、季節が少し進みたくさんの花が咲き始めた。おかげでしばらく花遊びを楽しむことができた。
娘が考えた遊びは「宅急便ごっこ」で、娘が荷物で僕が運ぶ人。普段なかなか一緒に遊べない僕にとってはちょっと嬉しくもあり、これで歩いた累計数キロはなかなかハードなトレーニングになった。
今回の旅路は70km弱だったが、僕たち親子にとってここ数年の中で一番仕事も家事も保育園も気にせずに親子だけで話をし、時間を共有し続けることができた貴重なものとなった。
やっとたどり着いた今回のゴール地点。大きな教会の中でお祈りの時間に参加させて頂き、この日の宿を探しにウロウロしはじめる。
宿が見つかり、ひと休憩したら打ち上げ!と称して夜の町へ消えていく長谷部家。みんな好きなだけ食べて、飲んで、この日はたっぷりと寝た。
次はどこへ行こうかなあ。と考える自分と、今回家族と時間を過ごしたからそろそろひとりで秘境へでも…という悪魔の自分との交渉がしばらく続くだろうな。


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長谷部 雅一 Masakazu Hasebe

アウトドアプロデューサー / ネイチャーインタープリター

1977年4月5日生まれ。埼玉県出身。有限会社ビーネイチャー取締役
2000年から2001年の世紀をまたぐ時期に丸一年をかけての世界一周の旅をする。

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この記事へのコメント

2019.07.04 19:30
金と物が余っている、日本で足りないのは意欲、愛、人から褒められることです。今回御嬢さんは一番大事な3番目
を取得されました。立派。
ほな
2019.06.22 08:56
やってみたいです
やかた
2019.06.17 13:08
お子さんの印象はすごい。
ほな
2019.06.15 09:04
娘さんの宅急便ごっこ、いいですね!うちの夫もスペイン好きです。また、楽しい話を届けてください。
コーヒーブレイク
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