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旅とボトル〜青空カフェラテ〜

  • 2019.05.17
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長谷部 雅一



フランス南部やスペイン各地からスペインの北西の端まで続く巡礼の道、“カミーノ・デ・サンティアゴ”を歩いてきました。最終目的地の “サンティアゴ・デ・コンポステーラ”を目指す道のりは、スペインの美味く、美しい文化に触れながら自分と向き合う日本でいうお遍路にあたる素晴らしい神聖なるハイクルートです。
日常には無い贅沢感がある昼間から飲むビールの味が、これからの道のりを記す地図がより旨くしてくれる。
この巡礼路はスペイン各地からおよそ10のルートがあるのですが、僕は以前奥様とフランス側にあるスタート地点から最終目的地を目指す“フランス人の道”と名付けられた約800kmの道のりを選び、およそ120km歩いたエステージャ(流れ星という意味)という街まで歩きました。今回はその続きを、その旅の後に生まれた娘の保育園卒園記念に家族で歩くことにしました。
数百年前の建物があちこちに残る小さな街をいくつも抜ける巡礼路。僕たちはスタートのゲートをくぐって歩き始めた。
今回の旅で取れた休日は10日。移動や途中の滞在を考えると、そんなに歩く日程は取れない。そんな中で目標に立てるのが約50km先のログローニョという街まで歩くこと。実際は寄り道や町中散策を入れると、60kmはゆうに越えてしまう道のりです。
ルートの小さな起点には必ずこの先のルート説明の看板がある。この先の道の長さを辛いと思うか楽しみと思うかは自分次第だ。
道々に記されたホタテ貝のマークは、巡礼路の道筋を記してくれている。このおかげで道に迷うということはない。

バルセロナに入って準備をしながら数日を過ごし、電車やタクシーを乗り継いで今回のスタート地点であるエステージャに入る。僕たちは、まずはバルで腹ごしらえという言い訳でたっぷりとアルコールを注入!
この国は液体全般とバルの食べ物が安い。また水道水は土地によって味がいまいちだったり体に合わないので買わざるをえないが、価格が安いので気兼ねなく補給できるのがありがたい。
空は青、気温は10度前半から後半と歩くには最高の環境で僕たちは早速長い歩きの旅を始めました。1日目の目標地点は12km程先の街。移動と“補給”に時間がかかったため、出発は15:00という日暮れギリギリとなってしまう…。
時間が無いとは言え焦っても始まらない。最悪のためにテントを用意したので何があっても大丈夫。ただ一歩ずつ僕たちは歩みを進めるだけだ。6才の娘との歩みは決して早くない。でも、その時間は久しぶりの家族だけの時間を、ここ数年の出来事を語り、ふざけ、そして遊びながら進む貴重な時間になりました。
蛇口をひねると赤ワインが出てくる。巡礼者はこれを感謝の心をもってありがたくいただく。
休憩の際に飲むのは、娘は水、妻はワイン。僕はふたりからどっちももらって飲む。
道行く先には、巡礼者のためにワイン博物館が設置したワインが出る蛇口からワインをいただき休憩のたびにこれをチビチビと体の中に入れて味わうこともできました。疲れた体にはこれがなんとも言えないくらい染み入り、新たに一歩一歩進む活力にしてくれるのでした。
初日アルベルゲからは歴史を感じる協会から常に心に響くような綺麗な鐘の音が流れていた。
アブベルゲは全てセルフサービスが基本。朝いつも寝ぼけている娘も、朝食後のキッチンを一緒に片づけてくれた。これぞ旅マジック。

初日は日暮れ直前に小さな町のアルベルゲという巡礼者用安宿に滑り込み、無事に体を休めることができた。この日は僕たち以外誰も泊まっていないアルベルゲは貸し切りで、ラッキーなことに洗濯機も完備されていた。身も心も服も綺麗になった僕たちは2日目をスタートさせました。
2日目の道のりは今回の行程で一番長いセクションになる。後の行程との関係を考慮すると途中にちょうど良い宿が無いこともあり、1日で20kmを越える道を進むことにした。見渡す限り広がる森や地平線、そして収穫後のワイン畑は、日本には無い美しい田舎の風景を作り出していて歩く僕たちを少しも飽きさせない自然の演出がされていました。
ただただ広い世界を一歩ずつ進む日々。日々なかなか家族と一緒にいられない僕にとって何よりも幸せな時間だ。

思いの外元気に歩いてくれる娘は、休憩時間を良く拒む。そしてどうにかすぐに歩き出すために僕にあの手この手で交渉をはじめる。
途中にバルやカフェがないこの日の道のりで大活躍してくれるのが熱湯をたっぷりと保管してくれているボトル。このおかげで、道のりのどんな場所でも風が心地よい日陰は素敵なカフェになってくれました。
涼しい場所で飲む甘く温かい飲み物は、疲れた体に最高のエネルギーを与えてくれるのだ。

温かい飲み物は、先に先にと焦りがちな歩き旅のスピードを緩めてくれる。そしてそれが楽しい会話の時間を生んでくれる。
カフェオレに紅茶、ココアなど日本から持ってきた様々な粉末から自分の好みのものを選び、シェラカップに入れたら熱々のお湯を注ぐ。湯気をかき分けカップを混ぜれば至福のカフェタイムのスタートだ。時々春色の音色を放つ鳥が空を跳ねるのを眺めては、シュッと体を冷やす風と一緒にカフェタイムを存分に味わうのでした。
やっと見えた通過予定の小さな村。僕は約束の肩車をして小さなバルへ向かって進む。
カフェタイムを数度楽しみ、そして遊びながら進む巡礼に道のり。続きはまた次回お話しをさせてください。


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長谷部 雅一 Masakazu Hasebe

アウトドアプロデューサー / ネイチャーインタープリター

1977年4月5日生まれ。埼玉県出身。有限会社ビーネイチャー取締役
2000年から2001年の世紀をまたぐ時期に丸一年をかけての世界一周の旅をする。

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この記事へのコメント

2019.05.20 19:36
スケールが違うね。
ほな
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