第79話 コーヒーミルの進化

  • 2019.05.13
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朝に飲む1杯のコーヒー、いいですよね。それが挽き立てならなおさらです。もし自宅で挽き立てのコーヒーを味わいたいのなら、コーヒーミルが必須ですよね。最近はいろいろなミルがありますが、家庭で楽しむには手動式のコーヒーミルで充分だと思います。一日に何回も淹れるとか、より繊細な味わいを極めたいといったことなら、電動ミルも選択肢となりますが。ただし、電動ミルは挽くための方式が何タイプかあり、その性能には雲泥の差があります。中にはミルとしての基本性能が手動式より劣るものもあるので、必ずしも「電動が上」ということではありません。
朝の1杯。僕は自社のファインブレンドが好みです。
手動式ミルの方式はコニカルカッターと呼ばれるタイプで、どのモデルもほぼ共通です。方式が同じということは電動ミルのような性能差はなく、極端なことを言うとデザインやフィーリングで選んでも大丈夫です。いや、大丈夫でした、というべきか…。あのハンドミルが登場するまでは。
シンプルで質感のとても良いコーヒーミルです。
ドイツから超高性能の手動式ミル「コマンダンテ」が登場した時、大変強い衝撃を受けました。それは一言で言うなら、「豆を挽くための理想の形を、どこまでもただひたすらに追い求めたもの」です。おそらくコストの話は一旦度外視し、素材、構造などを徹底的に見直して作られたとしか思えません。それは例えば刃。一般的に手動式ミルの刃は、鋳物かセラミックが使われています。でもこれは刃物に用いられるステンレス鋼材で出来ており、さらに特殊加工が施されて高い耐摩耗性と鋭い切れ味を持っています。この刃に指先を当ててスッと引いたら、切れて血が出るのではなかろうか?そんな鋭さを持っている刃です。
見やすいように刃を引き出した図。エッジが効いてるの、分かります?
右:一般的なセラミックミル、左:コマンダンテ。粒の均一性は歴然。
また手動の回転速度を前提とした刃は、カットした粒をスムースに排出する設計のため、豆同士が不必要にぶつかり合ったり、挽き過ぎによって起こる微粉の発生を抑えます。また何より挽き目がとても均一であり、エスプレッソ用の極細挽きからフレンチプレス用の粗挽きまでしっかり対応します。コーヒーミルに問われる基本性能は、「メッシュが均一」であることと「微粉が極力出ない」ことです。その意味で、これは単なるハンドミルの域を超えた、プロ仕様と言っていい性能を示しています。
軸は2点支えでベアリング内蔵。怖いくらいクルックル回ります。
また何より特筆すべきは、回転軸にシールドベアリングを用いていることです。
例えば自転車ロードバイクの世界では、ホイールやペダルなど回転するパーツの軸には、必ずベアリングが用いられています。ベアリングのおかげでクルクルとストレスなく回るので、人の力を効率よく利用することが出来る訳です。もちろんベアリングもピンキリで、上位モデルほど回転の抵抗が無く、スムースに回ります。見た目では分かりにくい部品ですが、実はその違いを簡単に見極める方法があります。それは「空回し」をしてみることです。僕は初めてコマンダンテを手にした時、何となく無意識に、指先で軸部分をクルッと回してみたのです。すると驚くことにシャーッと綺麗に回転するではないですか!これには大変驚きました。
自転車と手動式コーヒーミル。まったく異なる二つのものですが、工業製品を作り込むという点ではとても共通するところがあります。コストを掛ければ幾らでも凄いものが作れる反面、価格や利益を踏まえるとそうもいかず…。実際、コマンダンテは35,640円(税込)もします。サーモス製品も真空断熱という特殊技術が最大のウリですが、その背後には金属を用いる加工技術があり、コストと理想像の狭間で切磋琢磨しているはずです。
…という話を酒の肴に、サーモスのエンジニアの方と飲んだら面白そうだな、なんて思ったりする、主に男性好みのコラムをお届け致しましたっ!


この記事へのコメント

ほな

コクと香り

QP

コマンダンテ興味深いです!まずは是非空回ししてみたい!

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