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たまには家出もいいもんだ

  • 2017.11.09
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長谷部 雅一



秋も深まるこの時期、僕はいつも家出をしたくなる。
別に家族との関係性が悪くなったわけではないし、友人関係が微妙になったわけでも社会人的に問題があったわけでもない。

秋色に変わり始めた上高地。この時期からがこのエリアが最も美しくなる時期なのだ。

ただなんとなく、家出をしたくなるのだ。誰にも何も言われることもなく、ただひとりで、自然の中で自然の時間に身を任せて、最小限の道具だけでひとりぼっちで過ごしたくなるのだ。

今回は長野県の上高地へ向かうことにした。せっかく上高地に行ったにもかかわらず今回は穂高も、槍ヶ岳もどこにも登らないというのがハセベ式家出術だ。

明るい内に簡易テントのツェルトを設置し、寝袋もマットもあえて使わずにツェルトに身を潜らせる。
無事にセットアップが終わったら、上半身をツェルトから出してビールの缶に指をかける…。
周りの自然は秋色に変わりはじめ、川の水が流れる音だけがずっとBGMとして流れ続ける。
これほど幸せな時間は他にあるだろうか?想像するだけで体の熱い部分がさらに熱を帯びてくる気がする。

今回の別荘となる簡易テントのツェルト。重さは缶コーヒー程度で、大きさは小さなペットボトル程度と本当に小さくて軽い…けど寒い。


お湯を沸かしてボトルに入れる。
この日一番の儀式であり、このあと全ての幸せにつながる作業でもある。
この時期は平気でマイナス10度くらいまで下がる上高地。まだ涼しい内に大切な作業に取りかかる。
それはお湯を沸かしてボトルいっぱいに詰めておくこと。
これをしておけば、お腹が空いたらいつでもご飯にありつけるし、コーヒーだってお湯割りだってなんでも好きなときに楽しむことが出来るのだ。


家出の日の食事は山登りの時と同じように軽量でお腹にたまるものを選択することが多い。

薄暗くなり始めた頃からが家出の楽しい時間だ。気温は一気に下がり始め、ツェルトの中で一番暖かいものは僕が吐く息だけになる。 持っている服を全て着込み、ヘッドライトの電気をともし、だんだん冷たくなってくる足をバックパックの中に突っ込む。 そして本を読み、物作りのアイデアノートに何事かを描き埋めていく。


持ってきた荷物は最小限。
命を守る道具と、ボトル、そして湯たんぽにもなる水筒など。
あとは趣味の道具達。

家出中は、なぜか色々なアイデアが浮かび上がってくる。
自然の中で五感が研ぎ澄まされるからだろうか?

深夜をまわると、寒すぎて寝るどころか何も出来なくなる。 時々シングルバーナーに火をともして瞬間的にツェルトの中の温度を上げたら、その温度が残っている一瞬だけウトウトしながら朝を迎える。

睡眠不足、残る疲れ、サウンドは散々なようだけど何かがフル満タンで満たされる家出。 また突然、どこかに家出しようかな。あ、大切なのは、出て帰る家があること。 これがないと家出にはならないのだ。


眠れぬ夜を越えてやってきたのは暖かい日差しと素敵な山の景色。
昨晩の寒さでまた木々が色づいたように感じた。



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長谷部 雅一 Masakazu Hasebe

アウトドアプロデューサー / ネイチャーインタープリター

1977年4月5日生まれ。埼玉県出身。有限会社ビーネイチャー取締役
2000年から2001年の世紀をまたぐ時期に丸一年をかけての世界一周の旅をする。

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この記事へのコメント

2017.11.17 21:48
若いからやれます。うらやましい。
ほな
2017.11.11 18:00
自然に触れたくて一人になります