バリ島で心と身体をととのえる旅

  • 2026.10.06
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取り急ぎ決めたのは、チケットと宿
なかなかタフな日々が続いて、心も身体も少し疲れてきたころ。僕は家族に相談して、急遽1週間後にバリ島へ出発することにしました。決め手は、家族の票数が多かったことと、僕がまだ行ったことのない国だったこと。そして今回は、冒険よりも癒やしを求めていたからです。

決めたのはひとまずチケットと宿だけ。羽田空港からジャカルタ経由でバリ島へ向かいます。空港の外に出ると、高い気温、食べ物の香り、旅行者に声をかけるタクシー運転手さんたちの声...。少しほこりっぽい感じまで、朝のバリの空気を、五感すべてで浴びました。
羽田からジャカルタ経由で、朝のバリに到着! お祈りをするための部屋が空港各所にあるのを見ると、日本を出たんだという実感が高まる。
空港からバリの中心地であるウブドや宿までは公共交通機関がほとんどなく、タクシーで1時間半以上かかります。車とスクーターがひしめく道を眺めながら、運転手さんとのおしゃべりを楽しみました。この国のこと、宗教のこと、ローカルフードのこと、そして行くべき場所。この時間のおかげで、僕たちの2泊3日のスケジュールはほとんど決まりました。
とにかくスクーターが多い。これぞバリの道。
アイスティーを一杯
コテージに着くと、ジンジャーのきいたアイスティーでお出迎え。汗ばむ気候の中、エキゾチックな味わいがなんとも心地よくて喉から胃までゆっくりと染み込んでいく感じがありました。
ジンジャーのきいたアイスティーでお出迎え。 普段は飲まないような味だけど、空気感含めて美味しかった。
一棟ずつ独立したコテージに泊まるのは、僕たちの旅では初めてのこと。窓が大きくて、いつでも島の景色が目に入ります。奥様と娘が部屋を楽しみ、おしゃべりがひと落ち着きするまで、僕はテラスに腰掛けて、ボトルの冷たいお茶を飲みながらのんびり待つことにしました。
昨今の日本のビジネスホテルの価格からしたら半額近いのにこの素敵な部屋!! この部屋も癒やしの旅の大切なパートになりました。
テラスで休憩。冷えたお茶を飲みながらまずはバリ島の空気にチューニング。
やることが決まっていない自由
午後は、歩いて30分ほどの街の中心地へ。スーパーや小さな商店で地元の価格感をつかんで、カフェでひと休み。マッサージ屋さんやお土産屋さん、セレクトショップを回って、またカフェでひと休み。やることが決まっていないって、なんて自由なんだろう。慌てず、焦らず、ただ気の向くままに。最高です。
インドネシアのお金「ルピア」に両替。とにかく「0」が多くて毎回脳内換算が大変でした。
中心地への道。農村地帯のような、散歩をしていても気持ち良い時間。
お店や民家の前、時には車の中にもある、バリ・ヒンドゥーの「チャナン」というお供え物。
道すがら立ち寄った寺院で水分補給タイム。長ズボンを履いて伺ったけれど、腰巻きなどをお借りして入りました。
ケチャのリズムに包まれて
夜は、ヒンドゥー教の寺院でケチャダンスを見学しました。古代の叙事詩「ラーマーヤナ」の、さらわれた妻を夫がサルの軍勢と一緒に救い出す物語を、男たちの声のリズムと踊りで描くものです。

ケチャケチャと続く声に、旅の疲れからくる眠気が重なって、ちょっとしたトランス状態に。気づけば1時間ほどの物語が終わっていて、僕たちは拍手をしていました。
男たちの声のリズムからケチャダンスは始まります。 一種のトランス状態に引き込まれていきます。
クライマックスに向かっていく。 やはり歴史と文化と神聖性を感じました。
バリのチャンプルと、懐かしい熱気
すっかり腹ぺこになって入ったお店では、おすすめの「ナシ・チャンプル」を注文。チャンプルは沖縄のチャンプルーと同じく「混ぜる、まぜこぜ」といった意味で、ごはん(=ナシ)にいろいろなおかずがのった定食のようなものです。このお店のものは盛り付けがきれいでしたが、超ローカルなお店ならきっともっと全部乗せで、ハセベ的にはそっちも旨そうだなぁ、なんて思いながら食べました。
おすすめのチャンプルーをつまみに、美味しい夜がスタート!
インドネシアのビール「ビンタン」でほろ酔いになり、熱帯に涼しい風が混じる街を歩いて宿へ。ウブドは、数十年前のバンコク・カオサンロードに似ている気がします。何でもそろうのに、どこか歴史を感じる街並みと、シンプルな空気。それでいて旅行者からしっかり稼ごうとする勢いがあって、こちらまで気づけば元気になってしまう。ほぼクラブだらけになってしまった印象がある今のカオサンではもう味わえない、人も空気も食べ物もホットなこの感じが、僕にはちょっと嬉しかったなあ。
インドネシアのビール、「ビンタン」で長い夜を楽しみました。
陽気な相棒、サウディーさん
2日目は「自分を清める日」と決めていました。テラスで朝日を浴びて、朝ごはんでひと息ついたら出発です。この日から最終日までお世話になったタクシー運転手のサウディーさんは、陽気で話の面白い人。夕方まで一日をともにするので、この出会いはとっても大事なんです。
サウディーさんの運転で、細い道をどんどん進む。話も道も面白い。
バリの歴史、島が抱える問題、文化や食のこと。お話を聞けば聞くほど、この島への興味が湧いてきました。

聖なる泉で、自分を清める
向かったのは、バリ・ヒンドゥー教の寺院ティルタ・ウンプル。「聖なる泉」という意味で、湧き続ける聖水で沐浴ができる場所です。着替えて門をくぐり、20以上ある吹き出し口をひとつずつ巡りながら、合掌して、お辞儀をして、水をかぶり、口をすすぎます。
ひとつずつ合掌して、水を被る。心と身体が整っていく。
気になっていたのは、僕たちがヒンドゥー教徒ではないこと。でもサウディーさんは「このときだけでも、ヒンドゥーの神々を信じて想ってくれれば大丈夫だよ」と言ってくれました。その懐の深さに、感謝です。

はじめの数カ所は、文化の違いや水の冷たさにまだ集中しきれません…。でも少しずつ、回数を重ねるごとに神聖な所作の世界へ心と身体が入っていくのがわかります。終わる頃には、願いが叶うことを祈るだけでなく、心と身体がすっと整っていくのを感じていました。そう伝えると、サウディーさんは「それはとてもいいことだね。連れてこられて僕も嬉しいよ」と笑ってくれました。

そのあとはコーヒープランテーションで貴重なコーヒーや独特なハーブティーを味わい、滝で癒やしのミストをたっぷり浴びてから宿へ。昼寝をしたり、本を読んだりして、せっかくのコテージをゆっくり満喫しました。
ジャコウネコの糞に混ざったコーヒー豆。丁寧に選別、洗浄を繰り返し、貴重な豆になっていきます。
初めて味わうお茶やコーヒーのフレーバー。 こういうのんびりした時間の過ごし方もまたいいな!
最後の夜、街にとろける
夕方は宿の無料カートに乗って再び中心地へ。あえて最後列の、進行方向と逆向きの席に座ってみました。対向車線にはみ出して追い越していくバイクや車。微妙に譲り合って、でも微妙に譲らない。そのホットな感じが、僕は好きなんです。
この感じの熱気!僕が大好きなアジアの風です。 いろいろな意味で、ちょうどいい!
最後の夜は、フィーリングで選んだお店でローカルフードを好きなだけ。ビンタンと、ヤシやお米から造る蒸留酒アラック(バリには密造アラックもあるので要注意!)でほろ酔いになり、僕たちはこの街にとろけていきました。帰り道のスーパーで気になるお菓子とビール、娘はアイスを買って、最後の夜を思いきり楽しみました。
どうみてもビンタンの空き瓶に入った蒸留酒の「アラック」。 乳酸発酵系の味で飲みやすく、ある意味危険。
立ち止まる旅も、また旅
翌朝はウブドの街を散策して、サウディーさんのタクシーで奥様ご所望の食器屋さんに立ち寄り、空港へ。

思い返すと、バリ島はなんだか優しくて温かい場所でした。その理由のひとつは、言葉かもしれません。インドネシア語で「ありがとう」は「テリ(ル)マカシ〜」、「どういたしまして」は「サマサマ〜」。この「サマサマ〜」が、老若男女、なんともいえない柔らかい口調とイントネーションで返ってくるんです。そのやりとりだけで、毎回心の中がすっと綺麗になるような気がしました。
日本到着直前の朝焼け。 さて、また頑張って、そして旅に行こうっと。
いつもの冒険とは少し違う、癒やしと休憩の旅。息を抜けない日々が続いたときこそ、こういう時間が僕をリセットしてくれる。あらためてそう感じた3日間でした。

さて、2016年から続いてきたこの連載も、今回で最終回です。振り返れば、山でも街でも旅先でも、いつもそこには相棒のボトルと、それを囲むあたたかな時間がありました。がんばる日もあれば、立ち止まる日もある。どちらも大切な旅なんだと思います。

長い間、僕の文章を読んでくださり、本当にありがとうございました。テリマカシ〜! またどこかでお会いしましょう!


この記事へのコメント


江戸っ子

毎回、ステキな投稿で楽しかったです。長い間お疲れさまでした。
そして、これからも、楽しい旅を!!

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