第246話 セイロンコーヒーと幸運のカギ

  • 2026.04.02
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僕がやっているコーヒー屋から程近いところに、東京農業大学という学校があります。ご実家が農業を営んでいる若者はもちろんのこと、日本でも数少ない醸造学科には酒蔵のご子息がいたり、また近年はバイオテクノロジーや環境問題の研究を志望する学生も多く在籍しています。言うなれば「食と農と環境」に関して様々な分野を学べる大学、という感じでしょうか。店には時折そんな学生がフラッと立ち寄ってくれたりします。中でも3月に卒業を迎えた“仲良し三人組”は、他の常連さんにも顔を覚えられるほど頻繁に来店してくれました。僕は彼らが来てくれるのをいつも楽しみにしていました。
三人組が1年生の時の学祭“収穫祭”の様子。まだコロナ禍で普通じゃない頃。
三人組が4年生の時の収穫祭。サークルの模擬店に行ってみました。
仲良し三人組は女子が二人に男子が一人という、少し珍しい組み合わせでした。また必ずしも三人ということでなく、むしろバラバラに来店する方が多かったけれど、なぜか店で偶然一緒になるようなメンバーでした。数ヶ月くらい前のある日のこと、僕の店で女子の二人が「卒業旅行の行き先」について相談していたことがありました。それはおよそ1ヶ月くらいかけて、東南アジアからインド方面へ旅をするというものでした。その時女子の一人、Yちゃんから「黒田さん、どこかオススメの国とかありますか?」と尋ねられ、僕はスリランカの話をしました。
この辺りを巡ったのでした。
スリランカはその昔セイロンと呼ばれた国で、今は紅茶の一大産地として有名です。でも以前は生産量が世界第3位を誇るコーヒー豆の産地だったのです。ところが150年ほど前、コーヒーの木に伝染病が蔓延して国中のコーヒーが壊滅状態になりました。セイロンは国策としてコーヒーを中止し、紅茶へと切り替えたことで現在に至るのでした。でも近年はわずかに生き残った木を“幻のコーヒー”として復活させようとする動きがあり、またそれに尽力している日本人がいて、セイロンコーヒーのカフェを営んでいるのだとか。そんな話を面白おかしく話しました。
スリランカのナチュラルコーヒーというお店の豆。日本人が経営している。
興味を抱いた彼女らは、なんと旅の行き先にそのカフェを加えました。そして本当に現地を訪れた上、わざわざお土産にそのカフェのセイロンコーヒーを買ってきてくれたのでした。いただいたコーヒーはアラビカ種、正確にはブルボン系の品種のようで、その味わいはとても優しく、苦味の少ない飲みやすいコーヒーでした。一般的にお土産のコーヒーは焙煎から日が経っていることが多いのですが、これは焙煎日の記載があり、非常にフレッシュな状態のもので驚きました。今回は女子二人による出来事でしたが、僕には仲良し三人組を表す象徴的な出来事のように感じました。
いわゆる一括表示。コロコロとした丸い文字がスリランカの言葉、シンハラ語。
その昔アラブ地域では、スリランカをセイロンと呼ぶよりさらに前はセレンディプと呼んでいました。そしてペルシャには「セレンディプと三人の王子」という古いおとぎ話がありました。これは旅に出た三人の王子が、知性と観察眼によって困難を切り抜け、想像もしていなかった価値あるものに辿り着く、というお話です。英語圏にはセレンディピティという言葉があるのですが、それは「思いがけない偶然の発見」や「偶然を幸運に変える能力」のことを指します。お気付きかと思いますが、セレンディピティの語源はこのおとぎ話が元になっています。
コーヒーの病気で荒廃したセイロンの農園を買い取り、紅茶の栽培を始めたのが、トーマス・リプトンさん。リプトンの創始者ですね。
仲良し三人組は一人ひとりが聡明さや洞察力、好奇心や行動力に溢れていて、何より自分自身の未来に対し心から真摯に向き合ってきました。卒業後はそれぞれ全く異なる道へと進むことになりましたが、彼ら三人には共通していることがあります、それはセレンディピティに通じる姿勢です。斬新なアイデアや解決方法、常識にとらわれないイノベーション…。社会に飛び出した彼らはきっと何かを生み出すような気がして、活躍がとても楽しみです。Yちゃん、Sちゃん、Hくん、それぞれの場所で思い切り羽ばたいてください!君達に負けないくらい、僕も自分の道のりをしっかり歩んでいきますよ。
新たなステージでの活躍を期待しています!


この記事へのコメント


ぽんで

いい話ですね。


ポンちゃん

素敵な出会いとお話しありがとうございます。


hirune

紅茶以外もセイロンというのがあるのですね!


tama

ファイヤーキング?
素敵なマグカップですね♪

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