僕は北を眺めて何を想うか?〜帰国編〜

  • 2024.01.09
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※もしよろしければ、前編「入国編」をご覧ください。
街を練り歩き、サムギョプサルをビールで流し込んだ前日、僕はとあるエリアに行けるツアーのブッキングをしておきました。これが僕の今回の目的。韓国と北朝鮮の国境付近にある「DMZ(Demilitarized Zone)=非武装地帯」に行くツアーです。
非武装地帯とは、国家や軍事勢力が停戦状態にある間で、衝突を防ぐために様々な協定に基づいて軍事活動を行わない地域のことです。朝鮮半島では北緯38度線付近の韓国、北朝鮮の軍事境界線から南北に2kmずつ帯状に幅をとったエリアのことをいいます。
僕は政治的な何かは語れません(語るには知識が足りない…)。でも、今まで様々な国を巡ってきて、スーダンやチベット自治区、インド・パキスタン・中国の国境付近など、地球上に人間が引いた線を境に起きている状態を自分の五感で見て、聞いて、触れて、感じてきました。それと同じように、韓国と北朝鮮の間にあるDMZで今の自分が何を想うのかを知りたかったのです。
朝一番、ボトルに温かいお茶を入れたら準備完了。ホテルの外でツアーバスにピックアップしてもらいます。カナダと韓国両方の国籍を持つ女性ガイドのツアーが始まります。日本語のツアーもあったのですが、日本語=日本人のみのツアーとなって様々な気遣いと表現があるツアーになる可能性があったので、多国籍な英語のツアーに参加しました。
もう冬に入っているのに暖かい日。でも熱い日本茶が喉を通るとなんだかほっとします。
バスの中では、「あくまでも歴史」という視点で日本やアメリカ、その他様々な国と韓国・北朝鮮との関係がフラットに話される。ときどきユーモアを交えながら進む進行の中、たくさんの学びと笑いの中バスは進みます。
ツアーは少しずつDMZエリアに近づきます。通過したのは「統一大橋」というところ。ここでは厳重なパスポートチェックが行われ、かつ徐々に緊張感が高まってきました。
最初に立ち寄ったのは「イムジンガク公園」という場所。ここは軍事境界線から7km程度の場所で、戦争当初破壊され、北と南の大切な鉄道輸送路を絶った「臨津江鉄橋」や、その爪痕が残る列車など、少しずつ当初のイメージをさせてくれる学びが始まります。
生々しい銃跡がある当時の列車。
近くで見ると、より壮絶な背景が頭の中に浮かびます。
個人的に感慨深かったのは、「観光」という視点。歴史や対立が現在も継続される世界情勢の中、観光というワードは全てを少しだけマイルドにしてくれます。この公園内の施設には、ツアー客向けの飲食店があり、アメリカンなハンバーガー、和食っぽいお店、ヨーロッパ風のパン屋さんなど、各国風のお店があり、休憩時間には観光客がたくさんお金を使い、そして頬張っていました。
アメリカの地名を入れた堂々たるアメリカンハンバーガーのお店。
眺める先は自由の橋。ここを渡ると北朝鮮側に入る…。
ツアーは数カ所立ち寄りながらさらに進み、「トラチョンマンデ」という、北朝鮮国境付近の街並みや韓国と北朝鮮の境界線の空気感を実際に見られる展望台エリアへ向かいます。説明を受けた後、まずジオラマで概要を掴んで実際の景色を見に行きました。実際は“空っぽの町”といわれている北朝鮮側の町、そして北朝鮮側で農作業をしている人々を、先ほど聴いた説明を頭で思い返しながら眺めました。
ジオラマを眺めると、地形も加わってそこにある緊張感と戦略がわかってくる。
展望台から北朝鮮側を眺める。
韓国で過ごした時間に体感した現代的な文化とそこにあるリアル韓国、それに対して目の前に見えるのはまだ耳と映像でしか見たことがない北朝鮮。今回は見る事ができましたが、できれば一度、規制でがんじがらめだとしてもあの国に一度足を踏み入れてみたいと強く思いました。
望遠鏡で北朝鮮側を覗くと、少し自分の中で緊張感が高まってきた。
おきまりのお土産屋さんでは、農産品がたくさん並んでいました。
ソウルの街にもどり、ブラブラと街を歩くともう夜に。この日は初韓国最後の夜なので、生のワタリガニの醤油漬けのカンジャンケジャンなどを、まずはビール、シメにヤカンのマッコリを美味しくゴクゴクいただき、パンパンに膨らんだお腹を抱えながらまた夜道を歩きました。
カンジャンケジャン。ちょっと値が張ったけど実にうまい!
現地でヤカンのマッコリ。そこで飲むマッコリはなんとなくひと味違った。
夜の街で一服。この国も灰皿の周りにはたくさん人が集まっていました。
翌朝遅めに市民マラソンで数万人が走る街並みを抜けて空港へ。そして見て見ぬ振りをしていたPCを空港のラウンジで開きます。グラスのビールを置こうとふと食べかけの皿を見ると、そこにはミートボールとインゲンのスマイルマーク。なんだか少し心地良い空間に感じました。
偶然が見せてくれたスマイルは、なぜか印象的でした。
韓国ともひとまずお別れ。また行きたいと思える国がひとつ増えました。
「僕は北を見て何を想ったのか?」その答えはまだ整理中ですが、少なくとも北朝鮮の地に実際に行ってみたくなった。というのがひとつの想いです。今回のウォーミングアップを機に、そろそろ遠征準備に入りたいな…。その前に目の前に山積みの仕事をやっつけないと!


この記事へのコメント

めるしー

いろんな感情が溢れ、考えさせられる内容で深かったです。旅の様子をもっともっと知りたくなりました。

michiru15

私も旅が好きで行ったところもありますが
知らないところがたくさんあり、
とても楽しく見せて頂き楽しいです。
ありがとうございます。

ゆーだいすきかあさん

少し怖い気がします・・・どうしても・・・

りくてんかい

色々と考えさせられますね。

アイス

サーモスと旅

ほな

気軽にあちこち、うらやましいです。

だあきち

お帰りなさい!
国境の写真、レアですね。
興味深かったです。

  • 長谷部 雅一

    そう言っていただけると様々な思いを共有できた気がして嬉しいです。
    また様々な旅をシェアさせてください。

定年ゴルファー

非武装地帯が永遠に続くことを願うのみです!!

  • 長谷部 雅一

    僕もそう思います。
    もしくは、非武装地帯がいらなくなる時代がきてくれたら嬉しいですね。

江戸っ子

戦争の傷跡がない国をさがした方が珍しいと言われますが、やはり、これは、負の遺産。私たち観光客は、おいしいとか、楽しいだけではその国のすべてを見ているように感じてはいけないののかもしれませんね。

  • 長谷部 雅一

    同感です。もちろん思いっきり楽しんでいただきたいですが、そこで様々な人に出会い、語り、何を感じ、想い、学んだのか?も大切なのかなと思っています。

ポンちゃん

辺境の旅。。。憧れます!

  • 長谷部 雅一

    今回のはまだ辺境までは行けなかったですが、
    いろいろな旅をまた共有させていただきますね。
    記事を通して旅をしてください!

ミキ

やかんのマッコリ良いですね〜

  • 長谷部 雅一

    これ、雰囲気も相まっていくらでも飲めてしまうのである意味危険でした 笑

ぽんで

北朝鮮は本当に謎なのでぜひ行ってみてもらいたいです。

  • 長谷部 雅一

    僕はリアルを自分の目で見ないと納得できないので、期を見て行こうと思います。その際はまた共有させていただきますね。

おこめ

いいですね。

  • 長谷部 雅一

    ありがとうございます。

コーヒーブレイク

うーん歴史は難しい。その時最善と考えても後の世から見たら別の選択肢があったり・・・自分が後悔しないことのほかに、他者や他の生命を傷つけずに済むか、考えて生きていく必要がありますよね・・・誰しも。

  • 長谷部 雅一

    まさしくその通りだと思います。
    歴史は未来の地球を担ってくれる子ども達にとって、誇りに思えるものは残し、そして新しい世界にとってネガティブになるものは僕たちの世代でどうにか解決できたらいいのですが…。

スッチー

良いです。

  • 長谷部 雅一

    ありがとうございます。

hirune

また良い旅を

  • スッチー

    良いです。

  • 長谷部 雅一

    旅は僕のライフワークです!
    また共有させていただきますね。

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