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電車にも第2の人生

  • 2020.05.20
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豊岡 真澄



みなさんこんにちは、豊岡真澄です。
昨年夏のある日。
私たちは東急テクノシステム長津田工場で、東急8590系が富山地方鉄道17480系に改造され ている様子を取材させていただきました。
今回は「電車にも第二の人生」の続きです。
「足元に注意して、運転席まで上がっておいで」
東急テクノシステムの車両工事部長、馬場さんに子供達は率先してどんどんついて行きます。最初の緊張は何処へやら、すっかり心を許しているみたいです。
子供たちのワクワクドキドキの顔を見ると、元気をもらえますね。
車内へ。
本当に嬉しそうな顔をしてます。
全ての機能が停止した 8590 系の車内。
いつも見ている車両とは全く違う雰囲気です。
改造中の電車は、まるで水を打ったような静けさです。 “電車は電気と空気で動いている”という話を聞かせていただいたことがあります。
パンタグラフが上がって、ブレーキや台車やドアに空気が入って、電車は初めて私たちが知っている姿になるんだなと改めて感じました。
普段見ている電車は、たくさんの部品や機器が動いているからこそなんですね。
運転席にはまだ、8695号車のプレートが残っていました。
長男は将来、運転の道か車両改造の道かをもう悩んでいるみたいです(笑)
引退した車両は解体されることも多いと聞きますが、こうやって長い間活躍した車両がここでふたたび新しい命を吹き込まれて、新しい鉄道会社で第二の人生をスタートさせ、たくさんのお客さまを乗せて走ることを思うとなんだかジーンときちゃいます。
僕、この電車に「頑張れ」って言ってあげたい。
長男はすっかり社員になったつもりのようで、ずっとずっと車両を眺めていました。
運転席にある運転用のキー(マスコンキー)の差し込み口。
小さな傷や凹みに、この車両が走り続けてきた歴史を感じます。
生まれ変わった 17480 系は富山地方鉄道を走っています。
もう乗った方もいらっしゃいますよね。
その後、工場の皆さんのご厚意で、8500系のモックアップを見学させていただきました。
マスコンハンドル、前照灯、尾灯、ドアなどのスイッチ類はもちろん、仕組みを見ながら実際にドアを開閉したり、普段触ることができない非常通報装置を押させていただいたり。
あらゆるボタンや装置を触らせていただいて子供達はもう大興奮です。
次に馬場さんにご案内いただいたのはなんとなんと!
実寸の 8500 系のモックアップです。訓練に使ったりすることもあるそうです。
馬場:なにかご質問とかありますか。
なんでも聞いてくださいね。
豊岡:では早速(笑)
譲渡先から一番人気がある車両はなんですか。
馬場:そうですね。
引退する車両がなければ譲渡できないので、例えば“00系”というような特定の形式に人気があるような感じはありません。
ただ、車両の仕様はとても大事ですので、長さや車体の素材に対しての要望はあります。一番多いのは「1両の長さが18mぐらい」で「ステンレス製車体」のものですね。
そういう意味では東急1000系などはとても人気があります。
豊岡:なるほど、長さが少し短い丸ノ内線や日比谷線ぐらいの長さの車両でしょうか。
馬場:そうです、そうです。
首都圏の電車で一番多い車両の長さは約20mですが、地方の鉄道会社の多くは、昔から18mの車体を採用している会社さんが多いんですよね。
鉄道の施設と車体は、お互いがぶつからないように作る決まりがあるのですが、18mの車体が20mになると前後に1mずつはみ出すので、カーブで施設に接触する恐れがあります。 あとはホームや車庫の長さ、ワンマン運転用のカーブミラーやテレビモニターの位置などいにも影繹があるので、今までの施設をそのまま活かせる18mの車体は、ありがたい存在なんです。
なるほど。
車掌さんの方がいいのね(笑)
整然と並んだ工具。
こんな風景も工場ならではです
豊岡:確認しなくてはいけない項目がたくさんあって驚きました。
車体の幅だけではなく、長さの影響も考える必要があるのですね。なぜステンレス製車体は人気があるのですか。
馬場:それはですね。
簡単にいうとステンレスという金属は素材のバランスがとてもいいからなんですね。
いわゆる鋼鉄製の車体は加工しやすいのですが、重くてサビやすい欠点があるので車体を長持ちさせるために定期的に車体を塗装する必要があります。
アルミ製の車体は軽量でサビに強いのですが、車体の修繕や補修をする際に特殊な溶接が必要になるので、修理するときにとても手間がかかるんです。
豊岡:メンテナンスのしやすさも考えてのステンレスなんですね。
馬場:そうですね。
就役後の修理や補修が自社の工場で対応できるかはすごく大事な要素なんです。
現地には定期的に当社から技術者を派遣していますが、何年かに一度は大規模な検査を必ず行わなくてはなりません。
錆に強く、車体が長持ちするステンレス車体は、塗装の必要がないということも含めて地方の鉄道会社にとってメリットが大きいので引き合いはとても多いですね。
ただ残念なことに最近18mの車体は、廃車になる車両の数が少なくなってきていますから、時期によっては希望する数が揃わないこともあります。
例えば10両編成の電車は先頭車が2両しかありませんので、運転席が付いていない中間車が8両余ってしまいます。
そういう時は中間車に運転席を新しく取り付けて、先頭車に改造するんです。
豊岡:なるほど!!
だから同じ形式の譲渡車両に顔つきが違う電車があるんですね。
馬場:そうです!
豊岡:まさに大改造ですね。
ステンレス車体の8500系と一緒に記念撮影。あっという間の 1 日でした。
車両の設計チームの皆さんの職場を拝見させていただきました。秘密がいっぱいなので写真だけでご紹介です。
馬場:苦労もありますが、だからこそチーム全員で力を合わせて取り組んだ電車が走り出した時はすごく達成感があります。
なのでつい、送り出す車両に愛着が湧いてしまうんですけどね。(笑)
豊岡:ですね、ですね!とってもよくわかります。
本日はありがとうございました。
馬場さん、子供たちに向けてメッセージをお願いします。
馬場:私たちの会社は鉄道会社やバス会社の日常を、技術やものづくりを通じて支えています。引退した電車をもう一度再生させて、次の鉄道会社に送り出すのも仕事のその一つです。鉄道が興味のあるお子さんたちに、鉄道の仕事にはこういう分野もあるということを知って、もらえたらと思っています。
その中から一緒に仕事をする人が生まれたら最高ですね。
みなさま、ありがとうございました!
エピローグ
後日、長津田工場の開放日にスタッフがお邪魔させていただきました。
この日は残念ながら私は参加できなかったのですが、あの日8590系が停まっていたピットに馬場さんの姿がありました。
手がけた車両は100両以上。
多くの皆さんが足を止め熱心に話を聞いていました。
私たちが初めてお話しした時のことを思い出します。
中間車に運転席を取り付ける改造のお話はとてもわかりやすいです。
手作りの資料と、わかりやすく独特な語り口にきっとみなさんも惹きつけられたと思います。
きっと私たちが取材させていただいた時と同じように、一人一人に丁寧に接していらっしゃったのだと思います。
引退した車両に命を吹き込んで、ふたたび日本中に送り出す。かっこよくて素敵なお仕事だと心から思いました。
「17480系。お前、ここに来れてよかったな」
デビューする姿を眼の前にした馬場さんが、思わず車両に話しかけてしまう気持ちが、とってもよくわかります。
現地で車両を見たら、私も車両に話しかけてしまいそうです。
取材協力・写真提供
東急テクノシステム株式会社・富山地方鉄道株式会社
今回のコラムをもちまして、しばらく連載をお休みさせていただきます。
またお目にかかれる日を楽しみにしています。
ありがとうございました。
豊岡 真澄


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豊岡 真澄 Masumi Toyooka

鉄道文化人 ママ鉄 埼玉県出身。
元ホリプロアイドル。

1999年に雑誌オーディション合格をきっかけに、ホリプロからアイドルデビュー。
その後、担当マネージャーである南田裕介氏の影響で鉄道ファンとなる。
2005年に「鉄道アイドル」という新ジャンルを開拓したが、結婚を機に2008年にホリプロを退社。
現在は2児の母として子育てに奮闘中。

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この記事へのコメント

2020.05.20 13:03
ご主人がみたいね。
ほな
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