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包丁鍛冶体験は自分そのものだった!

  • 2019.09.13
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長谷部 雅一



“鍛冶体験”というワードを耳と目にした瞬間、僕は心が沸騰し、そしてすぐに飛びついた。「鍛冶」はものづくり好きにはたまらないサウンドだ。まだ刃物づくりは縁が無かったので、僕はどうしてもやってみたかったのだ。
向かった先は熊本県の人吉市。ここには蓑毛鍛冶屋さんという西日本で唯一鍛冶体験をさせていただける場所で、農具をメインにした鍛冶職人を代々続けている9代目と10代目が迎えてくれました。
工場に入ってすぐ目に付くのがこの飾り。毎年鍛冶始めにこれをつくり、自分の技術を確かめるのだそう。右から農民の鎌、武士の矛、商人の石倉の鍵。
小さな工場に入るとすぐに油と水と鉄のにおいが鼻に入り、そしてすぐに汗ばむような暑さを感じる。屈強そうな身体をしているのに優しそうな笑顔で立つ9代目と10代目の職人のオーラも相まって、まだ何も始まっていないのにすでにたまらない…。
作業前にエプロンを借りる。僕はもうこれを着た瞬間からドキドキが止まらなかった。
今回挑戦したのは和包丁。丁寧に鉄に鋼を挟む方法や機械類の仕組み、そして包丁づくりの流れを説明して頂いたら早速作業が始まる。あらかじめ大まかに形を作っておいて頂いた包丁の原型を熱く熱して、まずは機械でガンガン叩いていく。和包丁は背が厚く、刃先に向けて薄くなる。そして全体の厚さと長さをここで調整していく。
まずは鉄を叩く作業。十代目に支えられながらまずは最初の練習叩き。
鉄を叩くための機械は足でレバーを踏み込むと動き出すシンプルな物で、昔でいうハンマーの代わり。鉄が叩かれる音が工場中に響き渡るたびに、僕の心の中はどんどん高ぶり続けていく。
鉄を熱くするのは廃油を使った炉。ゴーッという大きな音と共にみるみる鉄が赤くなっていく。
厚さと大きさを決める叩き作業に、表面を整え綺麗にする叩き作業。形を決める整形作業、そして荒研ぎに仕上げ研ぎ。ほとんど機械を使っているのだけど、やっている作業工程はすべて時代劇に出てくる鍛冶職人と大きく変わらない。そこが鍛冶の面白い所だ。
赤くなった包丁を叩き、形を整えていく。この時にだいたいの刃の長さや厚さなどを決めていく。
おおまかな作業が終わった状態の刃物の表面。まだまだ鉄の板っていう感じなのに、この後これがどんどん刃物になってくる。
様々な作業を経て、最後に砥石で刃物の切れ味を決める作業をしている時に鍛治職人の神髄たる一面を見ることができた。
大きな機械で刃物を削って形を決める作業。火花がどんどん飛ぶこの作業にちょっと腰が引けてしまう。
荒研ぎの作業。なかな最良の角度を見いだせない僕に、9代目がわかりやすいアドバイスをしてくれる。
僕はいつも刃物を研いでいる時に、どうしても刃の持ち手に近い部分がうまく研げない癖がある。せっかくの機会なので相談もかねて見てもらうと、
「うん。ここは研げていないね。こういうの“真っ白”って言うんだよ。」
と、ニコニコ顔の9代目に言われる。コツを教えてもらいながら何度も研いでは確認してもらうも、毎回「まだ真っ白!」という返答が帰ってくる。
これが「真っ白」と言われながら仕上げ研ぎをしていた時。僕は必死。9代目はきっといろいろ含んで見守ってくれている。
見かねて僕の包丁を取った9代目は、一瞬鋭い目に変わったかと思うとほんの十数秒砥石に刃を当てただけでビシッと素晴らしい切れ味に仕上げてしまったのだ。これこそが職人。その姿は本当に格好良かった。
鍛冶作業はとにかく熱い!水分補給は集中しすぎた僕の頭のクールダウンにも一役買ってくれた。
今回はかなり“神の手”が入り、そしてある程度形が決まっているとこからの鍛冶体験だったけど、いつかは鉄のかたまりから作ってみたい。そう思ってしまうくらい楽しい体験をさせていただきました。
ここでは、買った包丁には名前のみ入れてくれるが、今回は僕が作ったので「作」を入れてくれた。いびつだけど愛するべき相棒が誕生した。


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長谷部 雅一 Masakazu Hasebe

アウトドアプロデューサー / ネイチャーインタープリター

1977年4月5日生まれ。埼玉県出身。有限会社ビーネイチャー取締役
2000年から2001年の世紀をまたぐ時期に丸一年をかけての世界一周の旅をする。

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この記事へのコメント

2019.09.27 13:08
職人さんが身近な存在だったら物をもっと大事に使いたくなります
よもちゃん
2019.09.23 15:13
うれしくなります。
ほな
2019.09.15 01:43
包丁、欲しくなってきた。でも、使ってないのも有るし、悩むところだ。
オカメインコ
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