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第86話 夏の自由研究

  • 2019.08.26
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黒田 悟志



地域や学校によって違いはあると思うけど、多くの小学生にとっては8月末で夏休みが終わる。海水浴やお祭り、旅行といったお楽しみも多いけれど、塾の夏期講習や習い事の数々なんかも目白押しでいろいろ大変だ。そんな中、絶対避けて通れないのが“宿題”。僕は子供の頃、夏休みの宿題は最後の3日間くらいで片付けるという「超・先送り派」だった。物事に対する基本姿勢というのは、大人になってもそう簡単に変わるものではなく、今も相変わらずたくさんの事を先送りして生きている。そんな僕に、ある小学生が宿題の相談を持ち掛けてきた。僕が焙煎工房を構えるシェアスペース「Juhla Tokyo/ユフラトーキョー」の管理人小川さんの息子、夏くん(仮名)だ。
夏くんは時々ユフラトーキョーを訪れることがあった。彼はその度にコーヒーをドリップしたり焙煎したりする僕の様子をよく見ていた。時には「英才教育だ!」などと調子に乗って、ドリップ手順や焙煎ポイントを真面目に語る僕の相手をしてくれた。それが功を奏した?のか、夏休みの自由研究にコーヒーの事を取り上げたいと申し出てくれたのである。それも夏休みの序盤のことだ。足踏みし続け、先送りし続ける人生を歩んでいる僕には、テーマの見つけ方といい、スケジュール管理といい、子供ながら眩しいくらいである。もちろん快く引き受けた。
レクチャーはユフラトーキョーの休業日にお店でやることになった。イマドキの自由研究がどんなものか全く分からないので、何を取り上げるかは夏くんの考えや興味を聞いてから決めることにした。で、当日。久しぶりに会った彼は、最初少し緊張した面持ちだった。そこでちょっと雑談しながら、どんな自由研究にしたいのかを聞いた。夏くんは、当然といえば当然だが、これまで目にしてきたコーヒーのドリップと焙煎に興味を持っていて、それをまとめたい様だった。ムフフ、英才教育が花開いたゼ(笑)こんな形で興味を抱いてくれたことを嬉しく思い、またせっかくの機会だからもうひとつ新しい事柄も伝えたい、とも思った。産地のことだ。
このコラムでも度々取り上げてきたけれど、コーヒーは農産物だ。そしてリレーのバトンのようなものでもある。そこでコーヒーという魅惑の液体が出来上がるまでを、3章に分けて伝えることにした。一つめが農産物としてのコーヒー。どんなところでどんな風に生産されているのか、様々な専門書の図や写真を見せながら分かりやすく伝えた。地球上でも限られた場所でしか出来ないことに、少なからず驚いていたのが印象的だった。また日本のお米と似ているところ、異なるところを彼の方から披露してくれたのは、僕の方が勉強になった(笑)
二つめは焙煎だ。僕は焙煎工房に誰も入れないことにしている。作業に集中するためと衛生面の配慮からだ。また焙煎技術に関して人に明かさないためでもある。これは僕に焙煎を伝授してくれた師匠との約束で、律儀に守っている。でも今回初めて夏くんを目の前に、焙煎機を余熱するところから釜出しするところまで、フルコースで披露した。特に時間と共に生豆の色や大きさ、香りなどが刻一刻と変わるところは最大の見所。これはポイントごとに豆を少量ずつ取り出し、サンプルとしてプレゼントした。焙煎機と同じくらい熱くなっている夏くんだった。
そして最後にドリップレクチャー。これは普段大人向けに行なっているコーヒーセミナーと同じ内容で行った。簡単そうに思ってたけど、難しい!と彼は言った。そして練習が必要だね、とも。フフフ、お主、ハマったな(笑)
たっぷり3時間くらいはかかったろうか、集中力を切らすことなく、彼は僕の話に耳を傾け、繰り広げられる出来事をしっかりと受け止めてくれた。でも盛りだくさんだったから、この全てをまとめるのは大人でも大変だと思う。あとはこの中から彼が何をどう取り上げてくれるのか、自由研究の成果が楽しみだ。僕も先送りしてきた人生の宿題に取りかからなきゃいけない。それぞれの2学期がもうすぐ始まる。


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黒田 悟志 Satoshi Kuroda

Day Drip Company 代表

スペシャルティコーヒーと呼ばれる良質なコーヒーの世界。その魅力を伝える為に、勤めていた自家焙煎店から独立し、独自のブランド【Day Drip Coffee】を立ち上げました。

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この記事へのコメント

2019.08.27 22:35
すごい講義ですね。難しいですが奥深いのですね。また、自由研究の結果どうだったか気になります。
それぞれの二学期…なのですね。私も人生の課題が山積みです。
ピー
2019.08.26 16:42
コーヒーを研究テーマにする夏くんも休業日にそれに付き合う黒田さんも素敵です!
私はコーヒーが苦手で一滴も飲めないのですが『コーヒーにこだわる素敵なオトナ』にあこがれています。
サーモスの真空断熱ポットコーヒーメーカーを買い、地元のショップでオリジナルブレンド豆を挽いてもらい深層地下水でコーヒーを入れて夫に飲ませています。近々手挽きのコーヒーミルも購入予定。いつか急にわたしもコーヒーを飲めるようになると信じているので、まだまだこだわって学んでいきたいです!
すぶりん
2019.08.26 13:51
いい講義ですね。
ほな
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